会えない時間は気にしない

「ういの彼氏ってどんな人なの?」

どんな……なんだろう。あまり考えたことなかったな。えっと、ぶっきらぼうで、意地悪で、少し変態気味で危険……かな? 職業的なものが影響して。なんて言えるわけないか。

「優しい人だよ。うん。優しい……はず?」
「えー? それ大丈夫? 変なことされてないよね?」

普通の恋人と比べれば少し変なところはあるかもしれないが、私達にとってはあれが普通だ。少し意地悪が過ぎて勘弁してほしいところもあるけど。

「されてない! されてない!」
「なら、いいけど。あっ! もう時間だから私行くね!」

女の子が大好きな恋バナ。彼氏がいるとくいつかれて少し面倒だ。しかしいないと言ってもいつしかバレてしまうもの。女同士の情報網をなめてたらいつか痛い目を見ると思うよ。18時からバイトなのでそれまで時間を潰したいというさっちゃんに付き合って学校近くのファストフード店に寄った。適当にポテトフライとか頼んで後は飲み物でねばる。これ定番。さて、さっちゃんが行ってしまったので一人取り残された私。

ふと携帯を確認するも連絡なんか来てるわけもなく。今週は忙しいって行ってたもんな。しばらくしたらまた向こうに一旦戻るとも言っていた。慣れたので寂しいとは言わないがもう少しデートとかしたい。会えたとしてもお家デートだし。まぁ、仕事の都合上いろいろあるのもわかってるけど。

なんとなく携帯を机の上に置いておかわりのコーヒーをもらいに行く。ガラス張りの店内は外がよく見える。1時間ほど前からここにいるが今日は天気が不安定だ。今にも降りそうな空。天気予報は相変わらずチェックしていない。友達は何も言ってなかったけど確か傘を持っていたから今日は雨予報なのかな。おかわりをもらい鞄の中を確認。そこにはいつも入れている折り畳み傘の姿はなかった。……いつ出したっけ? そう考えながらコーヒーを急ぎ気味で飲む。ここから歩いて家までは15分近くはかかってしまうので、降ってしまう前に帰りたい。足早にコーヒーを飲んで携帯を鞄に入れ、返却口へコップを戻し、ゴミを捨てる。外に出ると小雨。まずい。

軽く走りながら周りの傘にぶつからないよう注意をする。傘と傘の間を縫って走っていると後ろからいきなり腕を掴まれた。びっくりして後ろを振り返ると久しぶりに見た彼の姿がそこにあった。近くに車がとめてあると言ってさっき来た道へと私を引っ張っていく。足幅の違いさに少しよろつきながら秀一さんについていくとそこには一際目立つ車、シボレー。助手席へとエスコートされ車に乗り込む。運転席と助手席の間にはタオルと猫柄の折り畳み傘。あぁ、秀一さんの家に行ったとき忘れていったのか。運転席に座った秀一さんにタオルを渡されてスカートについてる水滴を払って頭にタオルを乗せる。車はゆっくりと発進し始めた。

「どうして私があそこにいるってわかったんですか?」
「お前がこの時間に家か学校にいないときは、ここら辺にいるからな。どうせまた天気予報とか見てないと思って迎えにきた」

ありがとうございます。とお礼を言う。さすが秀一さん。私の行動パターンなんてお見通しか。歩いて15分だから車で走ったら私の家まであっという間。ワンルームのアパートが見えてきた。実家から高校が遠かったので、高校入学と同時に一人暮らしを始め、今年で5年目。横に置きっ放しだった折り畳み傘を忘れないように鞄に入れる。家に寄っていってもらいたいけど、秀一さんのことだ。きっと仕事を抜けて来ているに違いない。期待はしていないが一応聞いて見る。いや、いつものところに車を止めてなく路駐なあたりで確定だが。

「家寄って行きますか?」
「悪い。仕事抜けて来たからすぐ戻る」

そうですかと自分の考えが当たっていたことに顔が緩む。私もなかなかに秀一さんの行動パターンを読めていると思う。いや、この場合は推理をしてみたと言った方が正しいのかな。そういえば、さっちゃんに言わないと。こうやって少しの時間を見つけては会いに来てくれるってことはやっぱり優しい人だと。顔が笑っていたのか何か失礼なこと考えてないかと聞かれて更に笑ってしまった。

「いいえ。秀一さんはちゃんと優しい人だなと思いまして。迎えにきてくれてありがとうございました」

仕事頑張ってくださいと言って車を降りようとしたら腕を引っ張られ目が合う。どうしたんですか? と聞けば来週連休がとれ、しかも金曜土曜とのこと。来週はゆっくりできるなとふんわり笑った秀一さんと唇が重なった。








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