制服を着てみましょう

目を瞑っていたら知らない間に寝ていた。どれくらい寝ていたのか全然わからないが眠たくてそこから動けない。8時に赤井さんが来るとメールがあったな。携帯のアラームをかけ忘れていたことを思い出し少しづつ目を開ける。手探りでそこらに放った携帯を探す。

「探し物はこれかな?」

手に馴染んだその形は私の携帯だ。ありがとうございます。……ありがとうございます?

「不法侵入!!」
「朝からうるさいやつだな」

勢いよく飛び起きた私は目の前の人物の両肩を掴む。私、昨日、玄関、鍵、かけた。この人どうやって入ったの。赤井さんの肩を掴んだまま呆気に取られている私に赤井さんはシンプルなキーホルダーがついた鍵を見せてきた。

「あ、合鍵?」
「不本意だが俺はういの面倒を見ないといけないから合鍵はもらっている」
「その内また散らかして入れなくなるので大丈夫です」
「散らかってるもの全部捨ててやるからな」

私はその合鍵を取り返そうと飛びかかってみるけどその鍵を持っている腕をひょいっと上に掲げられてしまう。あーもうこの人は。でも仕事は仕事なので合鍵を持たれるのは仕方ないことだろうと自分を納得させた。そういえば今何時だ? 携帯を見ると8時過ぎ。

「今日は13時から学校に説明を聞きに行ってもらう。いいな」
「それだけ言うためにここ来たんですか? それならメールでよかったのに」
「違う学校で必要なもの一式を運んできたんだ」

赤井さんの後ろに視線を向けるとそこには知らないダンボールとビニール袋が上から被さってハンガーに掛かっている制服があった。

「とりあえず制服だけでも着てみろ。サイズとか合わなかったら今日言わないといけなくてだな」
「とりあえず顔とか洗っていいですか?」

何で私は朝から上司に起き抜けを見られなくてはいけないのか。プライベートなんてあったもんじゃない。ダンボールからタオルとか洗面用具やらを取り出して洗面台に。顔を洗って髪をクシでとく。スッピン見られたと思ってももう遅いか。それと赤井さんの衝撃で忘れていたけど寝違いの痛さも大分和らいでいて、昨日より首がスムーズに動く。リビングに戻ると赤井さんは携帯を見ていた。

「あの制服着るんでこっちで待っててもらっていいですか?」
「ああ」

赤井さんが扉の向こうに行ったのを確認し制服にかかっているビニールをとる。ハンガーから制服を取り着てみる。うん。サイズもぴったし。年齢的にはアウトだけど。赤井さん着ましたよーと扉越しに声をかけると扉を開けて入ってきた。

「どうですか? 高校生に見えますか?」

その場で一周をしてみるとああ、いいじゃないか。高校生に見える。そこらの高校生のがよっぽど大人に見えるな。一言多いですと返そうとしたけどどこか懐かしむような雰囲気を纏った言葉で返ってきたので、なぜだか言い返せなかった。私が勝手にそう思っただけなんだけど。

「私向こうの学校じゃ私服だったので制服着たことなかったんですけど制服のネクタイって最初から結ばれててゴムを襟にひっかけるんですね」
「ああ、それはネクタイをしっかり締めない生徒が多いから今年からそういうタイプにしたんだそうだ」
「へぇー。学校も考えますね。私ネクタイ結べないんで助かります。ってか何でそんな詳しいんですか?」
「……ん、ああ制服をもらいに言ったときそんな話しを聞いてな」
「ふーん」

何か赤井さん髪を切った意外に違和感があるんだよね。何だろう? 答えがわからないことを考えていてもしょうがないのでまず今お腹が空いたとお腹が訴えに来たので何か食べたい。その音がしっかり赤井さんに聞こえてしまったのか視線が合ってしまった。昨日はコンビニのおにぎりしか食べてないのでそろそろまともな食事をとりたい。

「私ご飯食べたいんですけど、どこか近くにいいお店ないですか?」
「そうだな10時半からランチしてるハルって喫茶店があるからそこ行くか?」
「え? 連れてってくれるんですか?」
「その後どうせ学校まで乗せなくてはならないし食べてもまだ学校に行くのには時間があるからこの周辺をリサーチしていくといい」

うん。赤井さんの言う通りにしよう。昨日暗くて周りの景色とかよくわからなかったし。っていうか今日の赤井さん何か優しくて気持ち悪いな。

「どうした? そんなジロジロ見て」
「えっ、いや。何かいつもより赤井さん優しいなーって」
「仕事だからな」

あっ。そうですね。仕事でしたね。





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