5.原因不明のときめきばかり

「は? それってういちゃんの手料理食べたってことか?」

たまたま同じスタジオで撮影だった坂田と休憩室で会った。向こうからこの間ういちゃんと撮影した雑誌見たよーとヘラヘラと話し始め、いいなー。俺もういちゃんの彼氏役したいわ。ってか彼氏になりてーと自分の願望をペラペラとしゃべる。俺がポロッと高杉が忙しい時に仕事一緒になると家で手料理くらいは食べさせてくれるかもなと言ってしまたが故に一段とうるさくなった。

別に隠すことでもないかとああ、そうだが。と答えるとマジかよーと机に突っ伏して項垂れる。

「美味しかった?」
「高杉が食べたがる理由かよくわかった」
「そんなに上手いんだ。ってか土方、ういちゃんに気ぃあんの?」

予想打にしない質問にタバコの煙を吐き出そうとして口元に持っていった手を一瞬止めてしまった。そんなことはないし第一ういから誘ってきたしな。ないないと煙を吐き出す。

「ねーよ。別に。っていうか」

うい、坂田のこと苦手だからと言おうとしたが何だってコイツの手助け見たいなことしなければいけない。本人にハッキリ言われてダメージを受ければいい。

「ていうか。何だよ」
「何でもない」

言いかけるのは無しだよなーと胸元にかかっている小道具の眼鏡をいじくり始めた。それしてもういもこんな奴に狙われてさぞ大変だろうな。

「でもういちゃんに会う機会自体少ないんだよね。この間の撮影で初めて会ったし、それ以降会ってもないし」
「初めて会ったって。それ好きっていうより単純にファンなんじゃねーの?」
「……よく見てはいたよ。同じ事務所だし。それまでしゃべったりしなかったけど、一目惚れってやつ?」

確かに何か惹きつけられるものがあるのもわかる。実際坂田と同じ事を言う奴が出てきてもおかしくはないよなとも思う。そう考えるとういから家に呼ばれた俺は少しだけ特別な気がした。だからと言って好きとかそんなんじゃないが。

「ういちゃん、土方の事好きなのかな。そんな素振りなかったの?」
「それ以前にういはブラコンだからな。兄貴にしか興味ないんじゃねーのか?」

軽いため息をついて望み薄すぎと落ち込み始める。それにしても何で坂田の恋愛相談みたいな事になってんだ? 本当、俺からしたらどうでもいい話だ。壁にかかってる時計に目を向けると撮影開始時間まであと少し。タバコの火を消して立ち上がる。

「じゃ、俺行くわ」
「おう」

この後の段取りを頭で確認しながらスタジオに向かう。一瞬あの笑顔がチラついたのはういの話しをしていたからだと思うことにして俺は仕事モードに切り替えて撮影スタジオの扉を開けた。

原因不明のときめきばかり



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