7.キスマーク

お風呂に入っていたら玄関の扉が開く音がした。......誰かな? 私はお風呂から上がり最近お気に入りのルームウェアを着る。黒猫っぽくてこのデザインが好きだ。髪は濡れたままだけど乾かすのがめんどくさいので肩にタオルを引っ掛けて部屋に入った。そこにはニット帽。

「ライいらっしゃい」

ああと返事をしたライは難しそうな書類を見ている。私は冷蔵庫からお茶を出してコップを2人分準備をして、お茶を注ぐ。さて、夕飯はまだ作っていない。ライは食べていくかな。どうぞとお茶を出しついでに夕飯を食べていくかを聞く。

「せっかくだからいただこう」

何がいいですか? まだ決まってなくてと軽く髪から落ちてくる雫をタオルで拭く。食材何かあったっけ? と冷蔵庫を覗いていたらおいと声をかけられた。

「何か食べたいものありました?」
「頭乾かせ。風邪引くぞ」

面倒だからいいですと返そうとしたらいきなり立ち上がり部屋を出て行ったライ。不思議に思って開けっぱなしの扉から向こうを見てるみると手にドライヤーを持ったライが現れた。

「俺が乾かしてやる。そこ座れ」

顎でさっきまで自分が座っていたところをさすライ。乾かしてもらうとか恥ずかしすぎる。あとで自分でやりますと言ったら腕を引っ張られて強制的に座らされてしまった。まぁ、いいや。ここは素直に乾かしてもらおう。ドライヤーのスイッチを入れたライは躊躇いもなく私の髪を触り乾かしていく。

「ライも髪長いですよね。乾かすのめんどくさくないですか?」
「めんどくさいがちゃんと乾かしておかないといけないだろう」

ライはしっかりしてそうだもんな。大人しくじっと座っていると眠くなってくる。少しウトウトしていたらいきなりうなじを指先でなぞられて体が反射的に動いてしまった。

「何するんですか!? くすぐったいです!」
「うい、その跡ジンか」

跡......? 一体なんの話だ。戸惑っている私を見てため息をつくライ。跡ってなんですか? と聞いてもいや、いいと言ってドライヤーを持ち直すライ。

「何ですか? 跡って? 虫さされとかだったら薬塗りたいんですけど」
「悪い虫に刺されてるみたいだから俺が薬を塗ってやろう」

ある程度乾いてきたようでドライヤーを止め、床におき私の髪をかきあげ纏める。薬なら寝室の薬箱にあるので取りに行ってきますと言っても手を離そうとしてくれない。

「手を離してもらっていいですか?」

振り返ろうとしたら髪を上げている反対の手が腰に回り後ろに少し引っ張られた次の瞬間うなじにライが唇を落としてきた。声が出なくて体だけでもよけようとすれば腰に回された手が上に上がり肩を抱かれ更に逃げられなくなる。舌で舐められて少し強めに吸われる。予想外のことに頭も体も働かない。

「ラ......イ......? 何して」
「消毒だ。悪い虫に刺されてるって言ったろ?」

......もしかしてキスマークのこと? ジンに付けられた覚えはないけど跡があるということはそういうことだろう。でもなぜライがこんなことをする必要があるのかがわからない。ライは低く笑っていて楽しそうにしながら私を開放した。

「ういにいつまでも勘違いされているようでは、俺もあいつも気分が悪いんでな」
「それは保護の話でライは関係ないんじゃ」

保護の話しじゃない。うい、ジンと付き合い始めたのか? 真っ直ぐに聞いてくるライに私もそうですよと答える。また笑ったライは俺もういが好きだと言った。......あれは保護の話ではなく恋愛の話だったのか。バーボンが言っていたことがやっとわかった。

「でも、私ここを離れるつもりもジンと別れるつもりもないです」
「ああ、今はそれでいいさ」

そう言いながらドライヤーのコードを片付け洗面所に持って行って戻ってきたライはさっきはすまないと小さく謝った。


キスマーク





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