5.想いに気づいて

やめてと言いたいのに声が出ない。手首を顔の横に押さえつけられジンの顔が上にある。怖いけど心臓がうるさい自分もいて嫌になる。

「嫌なら抵抗しろ」

耳元で低く響く声はいつもと違う。男のジンがいる。抵抗出来ないほど押さえつけているくせに何が抵抗しろだ。何より大人の男の力に適うはずがあるわけがない。確信犯だ。顔が近づいてきてなぜこんな状況になっているのかわからない私は顔を逸らすことが精一杯だ。

「嫌か?」

私だって成人していてこの状況から何が始まるなんて分かりきっている。確かに私はジンの事が好きだ。でもそれは異性として意識をしていたわけではないはずだ。ジンはきっと誰でもいいのだろう。ベル姉がそんなこと言ってた。しかしどうすればいいのかわからない。ジンの顔も見れないし顔を逸らしてこれ以上動くことも出来ない。するといきなり首筋に顔を埋めてきたジンが舌を這わせてきた。初めての感覚に一気に顔が熱くなる。

「ジン!!」

思っていたより声が出て自分でもびっくりしているとジンと視線があった。てめぇが抵抗しないのが悪いだなんて言われてもどうしようもない。やめてと言おうとした口はジンの口によって塞がれているし。長いキスに苦しくなる。酸素を吸いたくて口を開けたら間髪入れずジンの舌が口腔内に。

ジンの熱い吐息とともに唇が離れる。繋がる唾液がとてもいやらしくて、嫌だ。ああ、もうこれは逃げられない。でもどうしてもこれだけは確かめたくて私は震える声で私のことなんとも思ってないんだよね? と。答えを聞くのが怖くて自然と目を逸らしてしまう。

「俺はういの保護者だと思ったことはない」

何言ってと視線を合わすと今度はジンが視線を逸らす。俺だって自分で驚きだと。ジンが素直なんて気持ちが悪い。ちょっと笑ってしまうと鋭い目つきでこちらを睨んでくる。

「ジンそんなこと一言も」
「言うわけねぇだろ」

再度力の弱まっていた手に力を入れるジン。抵抗しないなら続けるぞなんて抵抗させなくして。本気で嫌ではない私はジンのことが好きなのだろうか。

「ジンとならいいよ」

最初からそう言えと小さく笑ったジンにまた唇を塞がれた。


想いに気づいて






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