13.かくごはしてるでしょうね

ブラブラと買い物を1人でしていた。服とかコスメとか。日用品は重くなるから帰りに。少し疲れたので飲み物を買おうと近くのコーヒーショップでコーヒーを買って向かいのベンチに座ろうとした。

しかし、世間は日曜でここには人が溢れかえっている。向かいに行くのにも大変そう。少しここを突っ切ってしまうか考えていると人にぶつかってよろけてしまった。幸い転ぶ寸前にぶつかってしまった人に抱きかかえられたので、コーヒーも無事だ。

「すみません。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。すみません。お怪我はありませんか?」

……。見た目は大学生っぽい好青年。なのに、とても

「あ……かいさん?」
「赤井? 人違いでは? 僕は沖矢昴と言います」

そうだよね。赤井さんな訳がないのだ。見た目が全然違うのに私は何を言っているのだろう。

「すみません。少し知り合いに雰囲気が似てるなって思ってつい口に」
「そうなんですか。ああ、そうだ。お怪我はないですか?」
「大丈夫です。沖矢さんは大丈夫でしたか?」
「私は大丈夫です。では、私はこれで」
「えっ、はい。ありがとうございました」

その人はそのまま片手を上げて背を向けて人混みの中に消えていった。

その夜バーボンが家に来た。最近ジンは家に来てくれない。あんなに上機嫌だったけどやっぱりすぐに忙しくなってしまうものなのだろうか。

「最近よく来ますね」
「今まで赤井秀一がよく来てたから鉢合わせるのが嫌でね。随分来やすくなったからね」

そう言えば、私赤井さんに雰囲気の似た人と今日会ったんですよと口を開けばバーボンは血相を変えてこちらを振り返った。そんなに驚くことなのだろうか。

「本当に雰囲気だけですよ。見た目別人で赤井さんより爽やかでしたし」
「どんな人物でしたか?」

私は聞かれるままに特徴などを言うとバーボンは出かけると言って足早に出て行ってしまった。変わりに入ってきたのはジンだった。

「バーボンのやつ何かあったのか?」
「何か知り合いに似た雰囲気の人が街にいたって話をしたら飛び出して行きました」
「知り合い?」
「はい。ライに似てる人がいて……」

一瞬にしてジンの目が鋭い目つきになる。人殺しの目だ。私を睨みつけるように迫ってくると低い声でどこでだと言われる。素直に今日会った場所を言うとそうかと頭をひと撫でされバーボンを追うようにジンも出て行ってしまった。

取り残された私はこの後待ち構えていた運命に結局抗うことは出来なかった。なんとなしに自分が引き鉄を引いたなんて知らないまま。




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