12.ふるえるにおい

何だがとっても気味が悪い。来た時はただいまと言ったし私の分のお酒を用意したとか言ってくるし。

「ジン……。何か嬉しいことでもあったの?」
「まぁな」

どこか鼻歌で歌いだしそうな機嫌の良さ。仕事がうまくいったのかな。あまり深入りしては聞けないけど。

「うい。どっか行きたいとこでもあるか?」
「特にないよ」
「そうか」


ジンがご機嫌で饒舌だった数日後。久しぶりにバーボンが家に来た。少し険しい表情の彼は私に赤井秀一について何か知っているかと問われた。

「赤井……さん。何かあったんですか?」
「いや、知らないならそれでいいんだ」
「組織に関することなんですね」
「……。そんなところかな」

私は本当に蚊帳の外で大切な事は何一つと知らない。知らないから守られている訳で。でも、知ってしまったら全てが終わる訳で。

何が起きているかわからないけど、赤井さんに何かあったのは確かなようで、何かが大きく動き始めているのだろうかと思った。

私がジンにしてあげられる事はただ普段通りに振る舞うことしかできないのだ。




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