11.仕掛けのない愛情表現

ライがいなくなって数年。変わらない毎日。前より私とジンの会話は少し増えた様にも思う。

静かな夜。お酒を飲むジン。毎日いつ、この光景が見れなくなってしまうのだろうと思う事もあるけれど、そんな心配を他所にジンはそこにいた。

「ジン。私も少し組織の手伝いがしたいな」
「ダメだ」
「だよね。ごめん」

組織に関わった時点で私は降谷さんに捕まってしまう。結局私がジンにできる事は黙ってジンの側にいる事しか出来ないのだ。

「うい。俺が言えた義理はないがういには生きていて欲しい」
「え?」

こんな事を言われたのは初めてで、拍子抜けしてしまった。驚いてジンを見ると小さく笑っている。

「だから、こっちには来るな」
「わかった。って言ってもジンは力づくで止めるから私はこれから先も普通に生きてると思うよ」

心配しないでと言うとそうかと短く返された。ジンが心配してくれるだけで充分だ。

「私も今日は飲もうかな」

私は立ち上がり酎ハイを取りに行き、ジンの横に座り缶を開けた。少し勢いよく煽ると一気に体が熱くなる感覚がした。

「ジンはさ、私のこと何で捨てないの? 邪魔じゃないの?」
「邪魔だったらとっくに捨ててる」

即答してくれたのが嬉しくてつい顔が緩んでしまった。

title:魔女




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