9.おもうこと、たくさん
「どうした?」
「何も……」
少し気になる事があったけど、この手の話しをジンに聞くのはどうかと思いチラチラとジンを見ていたら、ジンも私の視線が気になるのか話しかけてきた。
相変わらず来ては黙々とお酒を飲んだり。変わらない毎日。毎日なはずなのだ。
あれからライを見る事が少なくなったなとは思っていた。……潜入捜査がバレたのかな。……単純に仕事が忙しくなっただけなのか。私が考えていてもわからない事だと諦めていたけど、ジンなら何か知っているはずなのだけれど、組織と関係のない私は組織の人間であるジンには聞けないでいた。
「うい」
「ん?」
何だか今日はよく話しかけられるなあ。機嫌がいいのか。それとも逆に虫の居所が悪いのか。何年も一緒にいるけどジンの思考はよくわからない。そこまで私が干渉しないのもあるからだろうけど。なんとなく深入りはしない方がいいと勝手に思っている。
「……」
「何?」
私は座っていたソファーから下りてジンの隣に座り、頭を肩に凭れさせてみる。するとジンはグラスを置いて、私の頭を撫でた。
「何でもねぇ」
「……そっか」
甘い恋人同士なら呼んでみただけーなどイチャつくのだろうけど。何だかジンは寂しそうにも見えて、理由は知りたいけどやっぱり私の中の本能が深入りは禁止だと言うのだ。
「ねぇ、ジン」
「何だ?」
「何でもないよ」
別に甘い雰囲気を求めている訳でもないけど恋人っぽいことしてみたいな。なんて。頭を撫でていた手が止まって腰に手が回ってきたと思ったら唇を塞がれた。お酒の味が口内いっぱいに広がり少しクラクラした。
おもうこと、たくさん
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