気づかなかった想い

「じゃあ、今言った様に練習再開」
「「はい!」」

跡部さん達が卒業して、夏の大会前になった。普段の仕切りも慣れてきた。それに、今年採用したマネージャー。一応面接や跡部さん達に相談して決めた。跡部さん達が卒業したからと言って、氷帝テニス部のブランドは消えたりはしなかった。

「じゃあ、次にドリンク出しますね。用意してきます」
「ドリンクの準備が早く終わったら、レギュラーのスコア付け。準レギュラーの奴らと変わってやってくれ」
「はい」

チラッと長袖から見えた腕の青あざ。まさか嫌がらせでも受けているのか。

「お前その怪我」
「……? コレですか? 実はこの間テニスボールが当たってしまって。もうほんと私ってドジですよね」

気を付けろよ。そう言ってドリンクを準備しに行ったういの背中を見ながら、コートに入った。


次の日、いつも早くに来て準備をしているういの姿が無かった。今日の練習メニューが変更になったから伝えておきたかったのに。近くにいた鳳に声をかける。

「うい、知らないか?」
「そういえば見てませんね」

俺探してきましょうか? と言う鳳にいや、いい。と話してる間にういが部室の扉を開けた。遅くなってすみませんと謝ってさっそく準備を始めた。


そうだ。相談をした時に跡部さんに釘をさされていた。俺達が卒業したからと言って、まだまだお前と鳳のファンがいるんだからな。もしかしたらマネージャーが嫌がらせに合う可能性は高い。その時はしっかり、守ってやれと。

「若。ういの事好きなんだろ?」
「そんな事ありませんよ」
「顔に書いてあるぜ。まっ、自覚するまで長そうだけどな」

そうか。惚れていたんだ。一目惚れなんて俺からしたら無いようなものだと思い込んでいたから気付かなかったんだろう。今、鳳の腕の中で泣いているういを見て後悔をしているからな。


気づかなかった想い
(もう、俺がいても)
(俺とはまるで違う鳳を見て思う)





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