途絶えた道はそのままで

「プリント片付きましたよ。会長様ー」
「ああ。ありがとう」

俺は受け取ったプリントを確認する。さすがだ。きっちりと仕上げてある。ういを見ると机に化粧品を広げていた。あっという間に化粧室の出来あがり。俺もパソコンから手を放しコーヒーを淹れる。

「何だ。デートか?」
「うん。そう」

短く返事をしたういは慣れた手つきでファンデーションを施し始める。ういは氷帝学園高等部の副会長。そして俺の元彼女。丁寧にマスカラをし始めているういがあっと声をあげた。

「この間、若と試合したんだって? 負けたみたいだけど嬉しそうに話してたよ」
「ああ。そうかよ」
「何よ。その返事。まさかまだ根に持ってるわけじゃないよね?」
「俺様がネチネチするタイプに見えるかよ」

そうだよねと笑うういの頭を叩いてやりたくなったがぐっと堪える。元彼女と言ってもアレは初めて失恋を経験したういを慰める為に付き合ったもの。俺からしたら屈辱以外の何物でもなかったがういの隣にいれるならとOKを出した。男遊びが激しいういだったが、意外にも健全な付き合いだったらしくキスから何もかも俺が初めての男だったらしい。

ういが若と付き合い出したきっかけは俺が試合を見に来いと誘ったあの日。日吉君に一目惚れをしたと言ったういはあっさり俺を捨てた。

化粧をし終えたのかさっきまで化粧室だった机の上は元の生徒会室の机に戻っていた。時計を確認したういはまだ時間があるからここで待つと言い、俺の隣に座った。

「……日吉にはちゃんと本気なんだよな?」
「それ聞くの何回目よ。そんなに後輩が心配?」
「男遊びが激しいやつに後輩が捕まったんでな」

ちゃんと本気です。愛してますーとベーッと舌を出してくる。お前は子どもかと頭を軽く叩く。それと同時にピロロロンと音が響く。その音に反応して鞄から携帯を取り出したうい。携帯を開けた時に見えた待ち受け画面は日吉とういのチュープリというやつだった。見る限りういの半ば強制の様なプリクラ。けど、日吉は日吉で満更でもなそうな顔。なんだ。幸せにやってんだ。

「今校門前にいるんだって。私行くねー」
「どこにデートだ?」
「ん? 若が美味しいケーキ屋見つけたから連れていってくれるんだって! じゃあ、いってきます!」

入ってきた時より可愛くというよりさらに綺麗になって出て行ったうい。ケーキ屋なんて俺様が嫌って言うほど美味しいとこに連れて行ってやるのに日吉に静かに対抗心。


途絶えた道はそのままで
(今更そんな事考えてもどうしようもない俺は自嘲するしか出来なかった)





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