周りは近くて

ずっと好きなのに。近づけないのは彼が王様だからで。同じテニス部で、彼と同じくらい人気があるはずなのに、なぜこの男とは気軽に話しが出来るのだろう。ああ、うさくさいからか。

「誰がうさくさいって」
「ごめんごめん。声に出てた?」
「ダダ漏れやったで」
「マジか」

何度か忍足が気を使ってくれて話す機会設けたろうかと言ってくれたけど、そこは自分で近づきたいのでそういうコネみたいなのはお断りしている。しかし、いつまで経っても声はかけられないままで。

「ってかさ。跡部君が1人でいるところ見た事ないんだけど。いつも樺地君と一緒にいない?」
「生徒会室では1人の時多いで」
「私、別に生徒会室に用事なんてないんだけど」
「常にタイミング見てるしかないな」

最近こういう話しばっかりなので、忍足も聞き飽きているのか自分の爪をいじくり始めた。ちくしょう、綺麗な指だなぁ。忍足の指を見ているとおい、忍足と呼ぶ声。この声は!! 扉の方を見ると私の想っている人。跡部景吾が。こんな間近で見るの初めてだ。忍足を見ると私の方を見て笑いを堪えている。失礼なヤツだと突っ込みたいけど、今は跡部君が目の前にいるからそんな余裕がない。

「どうしたん。跡部?」
「今から急遽ミーティングになったから早く来い」
「わかったわ。じゃあ、また明日な」
「えっ、あぁ、うん」

足早に行ってしまった2人。あっ! 何も声かけれなかった! 髪型や制服変じゃなかったかな?


周りは近くて
(昨日跡部君、私のことなんか言ってた?)
(俺と仲いいのか? 程度やったな)





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -