あと、55分
ベッドの上でぼーっと若が勉強している姿をかれこれ数十分見続けている。構ってくれないからヒマだ。じーっと見られているのが耐えられなくなったのかこちらを見た。
「お前いつまでそこにいる気だ」
そう聞かれて部屋にかかっている時計を見る。時間は4時。古武術の稽古まではまだ1時間もある。
「あと1時間?」
「早く行って自主練でもしろよ」
そう言って若は机に向かい直した。
「じゃあ、若。練習付き合ってよ」
「嫌だ。今勉強しておかないとテスト間に合わないだろ」
「そうだねー。若君は昔から真面目っ子ですものねー」
ゴロンとベッドに寝転がる。若は朝から部活だったから勉強出来るときにしておかないと間に合わなくなるのだろう。
「気が散るから早く出ていけ」
「これも精神修行の一つだよ」
「何が精神修行だ」
あと、55分
(ほんとに嫌なら力づくで追い出せばいいのに)