寒く、寒い

「ひよー寒いー」
「俺は暑い」
「私は寒い」
「俺は暑いんだ。離れろ」
「離れない」

隣に愛しの彼氏がいて、暖房の前でぬくぬくしている私はなんて幸せ者なのだろう! 一つ不満があるとしたら、いつもと変わらずの無愛想な彼氏のことだろうか。冷たいのなんのって。

「ひよが冷たいこと言うから寒いんだよ!」
「そうか、だったら暑苦しいほどもの言ってくれる跡部さんのところに行ったらどうだ」
「跡部さんねぇ」

名前だけで顔が引き攣る。私はあの人が苦手だ。テニス部の部長で日吉の憧れの人。日吉風に言えば下剋上をしたい人物。とにかく派手好きで日吉とは正反対の性格。だけど、努力してるところとかそういう根の部分は客観的に見てると似ているなと感じることも多いのだけど。

「何、ニヤニヤしている」

知らない間に顔が緩んでいたのか。跡部さんと若さんは似てるなと思ってと思っていた事を口にするとどこが似ているんだと返された。教えて欲しい? とからかおうと思ったら強引に若に寄りかかっていて辛かった体制が急に楽になる。腕を引かれて若に後ろから抱きしめられている体制になっていた。若にしては随分珍しい行動で寒かったはずなのに一気に体温が上昇し始める。若も同じだったようで若の顔を見ようと振り向こうとしたらこっちを見るなとこれまた強引に頭を掴まれた。

寒い、寒い
(ここで顔を赤くしてたら、跡部さんには程遠いんじゃない?)
(うるさい)





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