忘れないで忘れて2

「会長さん!」

廊下で声を掛けてきたのはういだ。

「おう。ういか」
「名前ちゃんと覚えてたんだ!」
「当たり前だろ?」

生徒会室寄ってくか? 今日は時間あるからそうしようかな。仕事の邪魔にならない? 不安げな表情を浮かべてるうい。ならねぇよ。そう言うと嬉しそうに笑った。

「今日部活は?」
「あぁ、休みだ」

珍しく部活が休みだった今日。なんてタイミングがいいのだろうか。仕事しててね。ここのポットとか勝手に使っていい? あぁ、いいぜ。じゃ、お茶淹れるね? 頼む。やっぱアールグレイかな。そう呟いたうい。好みは変わってないんだな。

「はい。どうぞ」

丁寧に出された紅茶とともに、茶菓子も一緒に出てきた。勝手に茶菓子出しちゃってごめんね。とういもソファに座ってくつろぎ出した。

「今は、何の仕事してるの?」
「あぁ、俺らも卒業だろ? 次に回すための整理ってとこだな。もうほぼ終わったけどな」

この時間がずっとずっと続けばいいのに。そう願っても無理なのはよくわかっている。ういの記憶にもう前の俺はいない。代わりに周りの女と同じイメージを持っているのだろう。なぜ、母さんはういを氷帝に通わそうとしたのだろう。俺が通っていることを知っているのに。きっとういが俺の事を忘れているのは都合のいいことに違いないのに。


「景吾と離れて暮らすの?」
「そうよ。もう会えないかもしれないわね」
「そんなのやだよ!」


そんな会話を離婚前に聞いた気がする。珍しいくらい仲がよかった俺達。ふとういを見るとボーッとしている。

「どうした?」
「うーん。前会った時から思ってたんだけど、会長といると懐かしい気持ちになるんですよね。今だって、何かこの光景懐かしいなと思って」

……思い出すな。思い出せ。そんな考えがぐるぐると頭を回る。そういえば会長は卒業後どうするんですか? ういの声で我にかえる。あっ、あぁ、このまま内部進学だな。ういは? 実は私外部受験なんです。どこに行くんだ?

「大阪の大学に進もうと思ってるというより、母が大阪に引っ越すって急に言いだしたんです」

多分俺とういが会った事がバレた……というよりういが話しをしたんだろうな。びっくりしている母親の顔が浮かぶ。そういえば元気なのかな? こんな事を思えるという事は、まだまだ俺も余裕なのかと自分で自分を笑った。


(また、来いよ)
(ヒマがあれば)
(卒業が本当の最後)



+++
でも、大阪なので白石辺りと夢主が友達になって跡部はまだまだ1人で悩みに悩むんだと思います。





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