サクランボ
「お前何でそんなに、さくらんぼが入ってるんだよ」
「良かったら食べない?」
私はみんなにさくらんぼが入ったタッパーを回す様に言った。そういえば、さくらんぼの茎を口で結べる人はキスが上手いんだっけ。そう言って茎を口に含んでもごもご口を動かす。それに気付いたのは忍足だった。
「何やっとんの? うい」
「んー、サクランボの茎って口で結べるとキスが上手いって言うじゃん? だからやってみようと思って挑戦中」
「あーあれな」
「忍足なんか出来そうじゃん。やってみてよ」
「俺出来るで」
そう言って茎を口に含んで、すぐに、ん。と見せられた。とりあえずすげーと返しておく。なんなん。その薄い反応……。と落ち込んでいる忍足を放置し、私達の会話に興味を持ったのか跡部がこっちを凝視している。そんなに見ないでも……。
「跡部出来そうじゃん。やってみなよ」
少し茎とにらめっこしたあと、口に含み始めた。そこらにいたがっくんと長太郎にも進めてみた。近くにいた滝もやってみようかな。と始めた。
「ういー。みんな何やってんの?」
「おージロちゃんおはよ。ジロちゃんもやってみる?」
ジロちゃんに説明をしたら、可愛く口をもごもごさせ始めた。ジロちゃん可愛いなぁ。あーくそくそっできねーと言ってるのは、がっくん。どうやら出来なかったようだ。
「僕出来ました!」
「出来たぞ」
「結構簡単だね」
上から長太郎、跡部、滝。何か長太郎は予想外だ。長太郎が宍戸に進め始めた。しかし、宍戸は顔を真っ赤にして上手に逃げていた。宍戸、激ダサだぜっ。跡部は樺地君に進めている。そしたら器用にやってのけてしまった樺地君。何か複雑な気持ちだ。ふと少し離れた所でご飯を食べている日吉に目がいく。
「日吉さくらんぼ回って来た?」
「ああ。はい、美味しかったです。ありがとうございました」
そう言って片付けて先にコートに戻っていってしまった。まぁ、このての話は日吉に言うと冷たく返されそうだったから黙っておこう。
「ねぇーういー。出来たよー」
ジロちゃんが出来てしまうとかちょっとショックなんだけど。なんだよ。この部、と思いながら片付けて、私もマネ業に戻った。
〜日吉視点〜
会話を聞いて少し気になってしまった。この位置からだと俺が何をしているのかわからないだろうと、口に茎を含んだ。
なかなか難しいな……。ちょっと苦戦したけど、出来てしまった。
「日吉さくらんぼ回って来た?」
美鈴先輩に声を掛けられ、慌てて弁当箱の中に出来たソレを隠した。あの会話については持ち込まれなかったので安心した。
サクランボ
(そういえば、日吉って出来るんかな?)
(どうなんだろ。言ったら殴られそうだから言わなかったけど)