体育祭

周りにはカップルがイチャついてたり好きな先生にアプローチかけたり自分の組みが勝つよう必死に応援したり。中心では台風の目が行われている。俄然体育に関してはやる気のない私にとってはただの暑いだけのイベントである。友達はそろそろ彼氏が種目に出るから見に行ってしまったし他の2人は沖田先生のところに行くと言って行ってしまった。1人この炎天下の中にいても仕方ないので全体が見渡せそうな日陰に避難をして高みの見物。ボーッとしていたら聞き覚えのある声が隣から聞こえてきた。

「うい先輩じゃないですかー」
「しーちゃんじゃないですかー」

暇なの? 友達が土方先生のとこ行くーって。へー。しーちゃんもう自分が出るのは終わったの? これからリレーですよ。先輩はもう終わりました? 終わったよ。ひまでひまで。え? 何に出てたんですか? 綱引き。

「高杉先生のとこ行かなくていいの?」
「何か熱中症患者がいっぱいいたんで行くのやめました」

私達が好きな先生はとても人気ですねー。高杉先生も教師リレー出るの? 出る出る。でも赤組だから敵同士だけど。じゃあ、私が高杉先生応援しないとなのか。

「今は赤組が勝ってるんでしたっけ?」
「だったかな」

……飲み物でも買いに行く? 行きましょうか。玄関口に行くと女子の大軍に遭遇。これは坂田先生派の人達か。坂田先生は暑そうにダレている。そこに先生に冷たいものをあげる人やうちわであおいであげたりとプチキャバクラみたいになっている。

「キャバ状態」
「確かにそうですね」

自販機で飲み物を買い隣に置いてあるベンチに腰をかける。冷たい炭酸が喉を通るとすごく気持ちがいい。台風の目が終わって1年の全体リレーが始まる。台風の目が終わった男子生徒が応援していた女子生徒とこっちに歩いてきた。

「きっくんかっこよかったよ! 勝ったし何か奢ったげる!」
「えっじゃあ、歩狩汗にする!」

「先輩ってああいうの羨ましくならないですか?」
「学校でイチャつく。みたいな?」
「んーいいなって思うけど出来ないもんは出来ないからね」

イチャイチャしながら戻っていくカップルとは反対に女子四人組3年の人達だ。いかにもギャルで携帯で撮った写真を見ながら歩いてくる。

「最後の年に土方先生と写真撮れてマジラッキーなんだけど!」
「私も高杉先生と撮れたし今日ホント最高!」

それぞれに違う先生が好きらしくそれぞれの写真を見て盛り上がりながら自分たちの飲み物を買う。ひとりは坂田先生にと甘ったるいいちごミルクを買ったのを見て土方先生と高杉先生や沖田先生にも買うという話しになっていた。

「沖田先生には炭酸でいいかなー」
「高杉先生と土方先生って何がいいんだろ?」
「みんなブラックコーヒー渡してたから同じでいくない?」
「えーでもそれだとみんなと被るし!」
「私ペン持ってるからそれでメッセージ書けば良くない?」
「いいね! 決定!」

騒がしく自販機をあとにしたギャル達はとても楽しそうだ。

「少し優越感味わえるからこの関係嫌いじゃないけどね」
「ってかどんだけブラックもらってるんですかね。口の中渋くてしょうがないじゃないですか」
「確かに。マヨネーズ差し入れ出来たら一番なんだけどこの暑さだと腐るしね。それにどっちかっていうと微糖派だし」
「ビックヤクルコ渡しておけばとりあえず喜ぶのに」

それにこの女子軍の波に乗っかってノリに任せたら写真取れるんじゃない? キャピキャピなノリは苦手だけどたまにならいいですよね?

という訳でそれぞれ微糖コーヒーとビックヤクルコを手にまず土方先生のところに向かうことにした。とってもいっぱい女子がいる。プチ写真撮影会みたいになってる。列になってる。体育祭のときは自分のクラス見てればいいって言ってたから暇なのかな。なんとなく周りにいると一旦人が引いたので声をかけることにした。

椅子の下にはブラックの缶が5個もある。片手にもブラック。

「ああ美鈴と四季か」

苗字呼び違和感あるな。

「先生お疲れ様でーす。微糖のコーヒー差し入れにきましたよー」
「おお。ありがとう。口の中渋くてしょうがなくてな」

ビンゴ。美鈴綱引きやる気なかったな。今もやる気ないですよ。ずっと日陰にいるだけですもん。……よかったら一緒に写真撮ってもらっていいですか? ああ。

しーちゃんに携帯の画面をカメラにして渡し先生の隣に並ぶ。すると大きい手が肩に回ってきて距離が縮まる。しーちゃんの顔がニヤニヤしてるけど気にしない。控えめにピースをするとシャッター音が聞こえた。シャッター音が聞こえたあとすぐに手が離れていってしまったのが寂しかったけど。

「ありがとうございます」
「教師リレー応援頼むぞ」
「あー頑張って赤組応援させてもらいます」

そろそろ高杉先生の方行こう。そうしーちゃんに言うとうん。行こうかと携帯渡される。待受がさっき撮った写真に変わっている。あとでしーちゃんにも同じことしてやろ。テントの下は簡易な救護が出来るようになっている。今は高杉先生の周りは人はいなくて絶好のチャンスだった。パイプ椅子に座りながらボーッと競技を見ている先生にしーちゃんが声をかける。

「高杉先生」
「どうした? 体調悪いのか?」
「あーいえ。差し入れです」

しーちゃんが高杉先生に敬語だと違和感あるな。ありがとな。ちょっと優しく笑った顔は完全にしーちゃんの彼氏だった。んーやっぱりこういう瞬間を見ると教師と生徒の関係は難しいと感じる。

「高杉先生写真一緒に撮ってもらっていいですか?」
「ああ」

しーちゃんから携帯を渡され画面を携帯を2人に向ける。高杉先生の手はしーちゃんの腰に回ってる。ちゃっかりしてるな。それかみんなに同じことしてるのか。さっきのお返しにしーちゃんに顔赤いよーと煽ってみると更に顔が赤くなるしーちゃん。可愛いなぁ。はいチーズ!

「撮れたよー」
「先輩ありがとうございます。先生私この後リレー出るんで暇なら見ててください」
「おー」

そんな会話を2人がしてる間にさっきの写真を待ち受け画面にしておいた。お互い写真撮れてよかったよと携帯を返すとちょっとという顔でこっちを見てくるしーちゃん。

「さっきのお返しだよ」

《男女混合リレー出場の方は入場口にお集まりください》

「じゃあ、私行ってきますね」
「いってらっしゃい」
「高杉先生も教師リレー出るんですよね? 応援してます」
「応援する相手が違うんじゃないのか?」

高杉先生ここ学校なんで。


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