冗談めかして

学校から帰ってくると無造作にソファーに置かれた白衣。誰の物ってそりゃ養護教諭の高杉先生の物だ。こんなとこに置いてどこ行ったんだ。家に気配はないので開かれたままの鞄の中を見てみると財布が見当たらないからコンビニかな。どうせ洗濯に回すつもりだろうとそれを手に取る。

……実は前からちょっと羽織って見たかったんだよね。持ってた鞄を置き羽織ってみるとやはり身長差があるから裾を引きずってしまう。裾を引きづらないように裾を上げながらリビングの隅に置いてある全身鏡で全体を見てみるとかなりブカブカ。それに制服に白衣って似合わないなーと見ていると玄関から晋助の帰ってくる音が聞こえてきて、うい帰ってたのか? とリビングの扉が開く。

「何やってんだ?」
「おかえり。何か前から羽織って見たくて。でも制服に白衣って似合わないよね。それより着替えもしないで何買ってきてたの?」
「ん? 酒」

そう言いながら冷蔵庫にお酒を入れていく。今夜の晩酌用ですかね。ソファーに座った晋助は白衣を羽織ったままの私を見てくる。

「ねぇ、どう? 保健室の先生ぽい?」
「下が制服だからな。なんとも言えないですね。美鈴せんせー」
「おお。いつもと逆だ。サボりはダメですよ。高杉くん」

おかしくてどちらともなく吹き出してしまった。私は白衣を脱ぎイタズラで晋助の肩に白衣をかけると晋助はそのまま立ち上がり袖を通した。中はスーツだからそのままの姿につい口から高杉先生だと出てしまった。

「何か家でその姿見ると不思議な感じ」
「だな。俺も何か変な感覚だわ」

襟元を正しながら晋助が振り返るとソファーに座った私を見下ろす形になる。背景が家で2人とも格好が格好なので余計不思議に感じていると晋助は右腕を私の頭上についてきたので少しだけ背もたれが沈む。そして私の顔をのぞき込む様に姿勢を屈める。何だか"高杉先生"に迫られている感覚に陥ってしまう。何だか恥ずかしくて肩を押し返すけどぴくりともしない。

「晋助?」
「高杉先生だ」
「は?」
「たまにはこういうのもいいんじゃないのか? 美鈴」

あ。スイッチ入ってる。しかも厄介な。どうせ洗濯するんだし、明日は日曜だし汚れても問題ねぇよな? そう意地悪く楽しそうに笑う晋助。養護教諭がそんな顔していいのか。

「ほら、呼んでみろよ。美鈴」
「た……かすぎせんせ」

普段悪ふざけで呼ぶとここは学校じゃねェと怒るくせに勝手だなぁ。コスプレイですか。どもりながらも呼んでみたら嬉しそうにしてるし。腕を捕まれソファーに押し倒されてしまう。こうなってしまっては逃げられない。それに本当に目の前にいるのは高杉先生なので何かイケナイ様な気がしていつもより心拍数があがる。

「美鈴……」

耳元で低く囁かれてしまうと体が反応してしまう。その反応に気を良くしたのか耳に舌を這わせられ、片方の手で手首を一括りで抑えられてしまう。

もう片方の手でネクタイを解かれるまであと数秒。





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