夏：side Z [10.08.23.]

一日中陽が沈まない短い時
長い冬を耐えきれるように
人は日差しの恩恵を余すことなく受け取ろうとする
真夏でもどことなく優しい光は
彼らに等しく与えようとする

夜になっても柔らかな白い光に満たされる様は
いつも灯りがある穏やかなキッチンを思わせる

降り積もり続けた白い雪は
時として
人の夢を渡らせる道という幸多き氷となる
海をも覆うそれは
夏の日差しにも溶けることはなく
それと共に暖かく世界を照らす



誰もが幸せそうに行き交う白い夏
その穏やかな愛情を受ける息づくものを
斬りつけてしまいたくなる狂気は
厚い氷に覆われた凍てつく海の底に
永遠に沈めてしまえないのだろうか


end.