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Lunch time(1) [10.01.25.] 


 創立記念日。しばらくは剣道の試合もないから練習の予定もない。店は定休日。久しぶりに暇な休日。
 さて、どうするか。
 ボーっとケーキを眺めながら考える。

「ゾロ、あと10分くらいで出るけれど、あなたの今日の予定は?」
「決めかねてる。寝て過ごすのもありか」
「デートでもしてきたら?」
「誰と?」
「一緒に行く?」
「そんな野暮じゃねえよ」
「ふふっ」

 そんな会話をしつつ、二人してケーキを運ぶ準備をしていた。
 ふと、本当になんとなく、ゾロの頭に浮かんだ。

「途中まで乗せてくれ。今日は俺がこれを持っていく」

 ロビンはちょっと目をやり、にっこり微笑んだ。


* * * * *



「剣士のにーちゃんはグルマユの店は初めてだって?」
「ああ。普段は学校があるからな。いつも運んでくれて、本当に助かる」
「なーに、お陰で毎朝ロビンとデートできるからな、こっちがお礼を言いたいぜ。ほらよ、もうすぐだ」

 まだ人通りもまばらな中、店に搬入する業者や店員が、忙しそうに動いている。ゆっくりと車を進め、その店の前に止めた。

「おはよう、ロビンちゃん! 今日は一段と綺麗だね。すてきなワンピースだ」
「ふふ、ありがとう」
「なーんだ、今日はデートなんだね? あー残念! フランキー、しっかりエスコートしろよ」
「おう! グルマユもしっかり働け!」
「グルマユ言うな!」
「おい、これはどこへ運ぶんだ?」
「こっちよ」
「あれ? ゾロ? 今日は学校じゃねえのか?」
「創立記念日で休み」
「そっか。あ、ロビンちゃん、あとはマリモにやらせるからいいよ。楽しんでおいでね♪」
「マリモじゃねえ!」
「ありがとう。よろしくね」
「おう。フランキー、ロビンを頼むな。今日は帰ってこなくてもいいぜ」
「なななな何言ってやがる!! てめえ、フランキー、ロビンちゃんと外泊なんて許さねえぞ!」
「何でてめえが口出しするんだ。ロビン、俺は勝手にやってるから、たまには気にしないでゆっくり楽しんでこいよ」
「ありがとう。じゃあ行ってきます」
「じゃあな!」

 軽く手を振り合いながら、楽しげなまま別れた。……約1名を除いて。

「おい、なんて送り出し方するんだ、てめえは。スケベ毬藻が!」
「何がだよ。惚れ合ってんだ。ロビンだっていい年だし、行き遅れても困るだろうが」
「レディはすべからくお年頃だ! 行き遅れなんぞあるもんか! あ、お義兄様と呼んでもいいぜ」
「アホか」
「何!?」
 
 ギャーギャー言いながらも、手は下準備に余念がない。そういえば、全て一人でこなしていると言っていた。料理の仕込みは勿論、当然店の掃除やセッティングも一人でこなすわけだ。
 急に黙って店内を見回すゾロを、サンジは怪訝そうに見た。

「どうした?」
「いや、好きだなあと」
「は!?」
「店の雰囲気がな、好きな感じだと」
「あ、ああ、そうか、そういうことか。びっくりした」
「何が?」
「いや別に」
「何か手伝うか?」
「んー。あとは料理の準備だけだからな。あ、ランチ用のケーキを切っておいてもらおうかな」
「おう」

 このまま厨房に入るのはと思い、周りを見た。かけてあったコック服にはなんとなく手を触れてはいけない気がして、手近にあったギャルソンのエプロンをしながらサンジの方へ向かった。
 ここが、城か。
 ふと視線を感じた。

「何だ? これ、駄目だったか?」
「え? あ、いや、それでいい。うん。さすがその辺は気がつくな。感心、感心」
「顔、赤くないか?」
「はあ? 何でてめえ見て顔を赤らめなきゃなんねえんだ! てめえが緑だからか! 補色か、俺は!」

 訳分かんねえ。

「……いや、熱でもあるのかと」
「何でもねえ。まあ、料理の準備に取りかかるからな。緊張感はあるから、そのせいだろ。ケーキはこんな感じで頼む」
「了解」

 緊張感か。あいつのプロ意識には頭が下がるな。下手な仕事はできねえなあ。気合い入れるか。


* * * * *



「お疲れさん。助かったぜ」

 そういってエスプレッソを入れてくれた。結局、ケーキ以外の手伝いもしてしまった。

「お前、今日これからどうすんだ?」
「あー、久々ここまで出てきたから、本屋とCD見に行こうかと」
「本! てめえ、本なんて読むのか?」
「本くらい読むわっ!!」
「まあいいや。昼、食いに来い。手伝いの礼だ。今日のランチ、俺様の大好物の海鮮パスタだ。てめえ、運がいいな。美味いぞ。あ、早くても1時頃な。それまでは、会社員のお姉さま方が大勢いらっしゃるから混むんだよ」

 男も来るだろうと突っ込もうとして、止めた。気が変られても嫌だしな。

「分かった」
「よし。じゃあ、とっとと行ってこい。さーて、開店開店♪」

 背中を押され、裏口から追い出されると、ヤツは「行ってらっしゃい」と言った。振り向くと、店の中へ入っていく後ろ姿が一瞬見えた。いつも聞き慣れている言葉なのに、何だかくすぐったい気持ちになったような気がした。


→(2)












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