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The wizard(62) [10.04.08.〜]


身を守る為のマントも破れ、傷だらけの2人が視界に飛び込んできた。
そこには異様なまでに張り詰めた気配があった。
2人は肩で息をしているようであるのに、その荒々しい筈の息使いは聞こえてこない。そこにいる者は、動くことさえかなわないような緊迫感に縛られていた。
そんな中で、サンジは微かな異変を感じ取った。異変というよりも悪寒と言うべきだろうか。物凄く禍々しいものが、足下のずっと奥底から湧き出てくるような、本当に僅かなものだが、確実に近づいてきている。
これは何だ?
問うようにゾロを見ると、気付けたかというようにフンと笑い、すぐクロコダイルと対峙し直した。
こんな状況でも相変わらずの上からで不遜な態度に、カチンときた。

「クソマリモ! 何モタモタしてやがる! こちとら聞きてえことが山ほどあるんだ。さっさとケリつけやがれ!」
「半人前は黙って見とけ」
「ああ!?」

いつもの調子で今にも蹴りかかろうとするサンジを、慌ててウソップが抑える。

「喧嘩は後にしろ!!」
「放しやがれ、鼻!!」

分かっている。でも、この感じはやばいと、頭の奥で警告音が鳴っている。ゾロも気付いているはずだ。いや、ゾロが招いたのかもしれない。分からないが、とにかくゾロの元へ行きたい。
だが、そんなサンジの気持ちを知ってか知らずか、ゾロは、また新たに剣の切っ先から魔法陣を宙に現し、呪文を唱え始める。もどかしさは増す一方だ。

「サンジ?」

そんな様子を訝しく見ていたエースが、説明を求めるように呼んだ。
ゾロを睨みつけたまま答える。

「下から何か来やがる」
「下?」

言われて意識を集中する。微かだが、確かに何かが。

「嫌な感じだな」
「悪魔とかの類じゃねえよな?」
「ああ、違うね。知らない気配だ」

エースは防御の魔法陣を張る力をより強くしながら、今度はルフィに聞いた。

「ルフィ、分かるか?」
「ん? 何がだ?」
「この気配だよ」
「??? 何も感じねーぞ」
「クソ鈍い野郎だな。足下だ、ずーっと下から感じるだろうが」
「いーや、何も感じねー」
「ああ!?」

サンジが苛立つままルフィに応じるのを横目に、ウソップはアルビダを見るが、どうやら彼女も何も感じていないようだ。

「サンジ、どうやら魔物には分からないみてえだぞ」
「じゃあなんだってんだ」
「おおお俺が知るわけねえだろ! 俺に怒るな!」

その間にも、ゾロはクロコダイルの周囲に新たな魔法陣を張りつつ応戦していた。お互いの攻撃がぶつかる度に金属のような高い音が響く。
その間もじわじわ静かに禍々しい気配は近づいてくる。
だが、そんな膠着状態は突然破られた。
クロコダイルの足が突然止まった。止まったというより、出られなくなった。
ゾロが片方の口角を上げて、ニヤリと笑う。
クロコダイルがはっとして頭上を見ると、高い天井にうっすらと、だがしっかりと魔法陣が描かれ、その円内に閉じ込められてしまっていた。攻撃と魔法陣を巧みに操りながら、クロコダイルを誘導したのだった。

「ちっ。だがな、足留め食らっただけで、まだまだてめえを殺れる力はある。みくびるんじゃねえ」
「みくびるなんざ、力のねえ奴がすることだ。てめえみてえにな」

カタカタと、小さく小さく地面が揺れ始めた。そしてそれは地響きと共に少しずつだんだんと大きくなってくる。

「魔物と結んだことが裏目に出たな。気付けなかっただろ? 魔物には感じられねえからな」
「……何を呼びやがった?」
「呼んだ訳じゃねえ。元々ここにあったもんだ」

ドンと一際突き上げられるように大きく揺れると、ゾロとクロコダイルの足元に大きな石の扉が現れた。
揺れも地響きを収まった。
現れた扉は内側から開かれようとするのを強固な鎖で封じられ、それがカチャカチャと音を立てている。

「……地獄の門か?」

エースが呟く。

「違え。地獄なら俺には分かるはずだ。あれは知らねえ」
「アルビダお姉様はご存知かい?」
「さあ。鎖で封じられた扉なんて、初めて見るわ」
「クソ緑、何考えてやがる!」
「コイツを消すだけだ。最初から言ってるだろうが、アホマユゲ」
「もういっぺん言ってみやがれ!!」
「てめえは黙っててめえも身を守っとけ」

もう一度応戦しようとしたが、向けられたゾロの表情に止まってしまった。
すぐにクロコダイルに対峙したゾロは、金色の瞳で言い放った。

「てめえは二度と生き返れねえ。言い残しておきてえことはあるか?」
「ミホークの息子だか天才魔法使いだか知らねえが、俺に随分とした口を利くじゃねえか」
「生き返るのに必要なものは、その骨もことごとく焼き尽くす。魂ごとな」
「できるもんならやって見せろ」
「できるからやるんだろ」

ゾロは3本の刀を構えなおした。

「まさか、あの扉……!」
「エース?」
「サンジ!! 最大限に陣を張れ!! ルフィ! 引きずられるな!! ウソップもだ!!」

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