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The wizard(60) [10.04.08.〜]


* * * * *



 2人だけが残された部屋は、空っぽさを強調するように広く感じられる。

「トリックスターを使ってまで奴等を隔離するとは、随分とお優しいことだ」
「邪魔なだけだ」
「そうじゃねえ」

 相変わらずニヤリとしたまま、人を見下すような視線をゾロに寄越す。

「生き返らせるのを見せたくねえんだろ? もし、純粋な魔法なら、それを目にした魔法使いもお咎めなしとはいかねえだろうし、曲がり間違って使われでもしたら大事だ。大切なプリンスを自分と同じ目に合わせたかねえよなあ」
「この体に慣れる時間が要った程度には力と体力がいる。そうそう簡単には使えねえ」
「簡単じゃねえが、出来なくはねえ奴はいた」
「エースは馬鹿じゃねえよ」
「だが、プリンスは違え。てめえの体を撫で回すアルビダを見る目は雄弁だったからな」

 眇められた金色の目が鈍く光を放ってみえた。

「俺を甦らせたら、その後俺がお前を甦らせてやってもいいぜ、色男さんよ」
「できるもんならな」

 白い刀をゆっくりと鞘から抜いた。

「けりをつけてやる。いい加減ゆっくり寝てえ」

 ゾロの羽織るマントが、ほんのわずか質量を増した。そして、先程と同じように、声を発したかどうかという小さな声で呪文を唱えると、ゾロの足元に小さな魔方陣が現れた。そこにその刀を突き刺したかと思うと、そのまま素早く残りの2本の刀を抜きさり、大きく振るった。

「うおっ!!」

 風圧に襲われ、クロコダイルは思わず目を瞑り、声を上げた。

「何だ、これは……」

 風が止み、目を開けると、クロコダイルの周囲を小さな魔方陣が覆い尽くしていた。全部で幾つあるのだろうか。初めて目にするものもあれば、よく見知ったものもある。これだけの魔方陣を同時に維持する能力に圧倒されたが、なんとかそれを表情に出さずに踏み止まる。とにかく生き返り、自分の力を取り戻さなければ。

「完全に戻りてえなら、動くな」

 そういうと、ゾロは改めて2本の刀を構えた。そして、ゆっくりとそれを振るうを、クロコダイルとゾロの間に、天井までつきそうなほど大きく、そして複雑な魔方陣が描かれた。
 動くなと言われたが、動ける気がしなかった。それはその気に呑まれたとは思いたくない。陣を張られたからだと自分を鼓舞する。実際、大きな魔方陣には制御の魔法も含まれているようだ。
 先程の魔法で、恐らくもう半分ほどは生き返りつつあるのだろう。霊体を体に結びつけただけでは、ここまで回復はしないはずだ。そう思うと同時に、無理矢理起こした体に霊体を取り付かせているだけにもかかわらず、これだけの力を発揮するゾロに対し、やはりその悪魔的能力を感じずにはいられなくなっている。自分は能力が絶大で希有な魔法使いだという自負がある。その自分の能力が、単なる魔法使いの劣ることは考えられない。だからこそ、ゾロは悪魔でなくてはならないのだ。
 悪魔であるなら、どれだけ強大であっても、必ず弱点がある。そして、ミホークの血を引く悪魔を倒すということは、ただ単に悪魔を倒したという以外の重要性がある。それは、今後のためには大いに役立ってくれるものだ。
 生き返ったらすぐに息の根を止めてやる。その算段は、既に出来ている。

「衝撃は、さっき突き刺した時の非じゃねえ。耐えられれば生き返られる」

 そう言いながら、突き刺してあった白い刀を引き抜き、口に咥えた。目を瞑り、呪文を唱える。声はない。ただ、そうしたことを気だけが伝える。そして、ゆっくりと金色の瞳が現れる。しかし、それは悪魔の持ち物としてのものではなかった。チャリ、と音をたて、3本の剣を構えた。
 ―――“三刀流の魔獣”―――
 その通り名が頭を過ぎった時、ゾロが大きな魔方陣の中央を突破して、クロコダイルを囲む無数の魔方陣を切り捨てたように見えた。見えたと思うと同時に、その心臓に赤と黒の剣が突き刺さる。

「ぐっ―――!!」

 何とかその衝撃に耐えた。
 しかし、その様子に、ゾロは刀を咥えたまま顔を近づけ、ニヤリとした。

「まだだ。楽に生き返れると思うか? そうそうできねえ経験だ。全てしっかり体感できる? これに耐えて、生き返れ」

 そう言うと、スッと下がりながら刀を手に取り、既に刺さっている2本の刀の間に容赦なく突き込んだ。
 あまりの衝撃に声すらでないクロコダイルの体が光を放った。


* * * * *



 空間が揺れたような気がした。気のせいかと思ったが、なんだか空気がビリビリというように振動している気もする。
 そう思っていると、エースが先に口を開いた。

「ルフィ、向こうで何が起こってる?」
「ゾロが魔法を使った」
「クロコダイル卿は生き返ったのか?」
「まだだな。今光ってる。すげーぞ!」
「光ってる?」
「光ってて、なんか痛そうだな。あれに耐え抜いたら生き返るんじゃねえ?」

 見たい。魔法使いとして純粋に見たいと、サンジもエースも思ってしまう。

「見せねーぞ」

 見透かしたようにルフィが言う。それにサンジがむっとした顔をした。

「もう魔法は使ったんだろ? じゃあ見たってやり方は分からねえんだからいいじゃねえか。少しくらい見せやがれ!」

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