QLOOKアクセス解析

unofficial site 砂の船 - Z×S -

The wizard(54) [10.04.08.〜]


* * * * *



「プリンスの結界は?」
「何ら変化はありません。固く封じ込めております」

 エースとウソップを移動させたことがバレていない上に、自分の状態にも何も疑問を抱かれていないと判断したゾロは、今気付いた風にして足元を見た。

「なんだ、これは」
「見て分からねえか?」
「封じる必要ねえだろ。俺は『約束』は破らねえ」
「そう思うがな。さすがに数百年前の真偽は知らねえからな。それを鵜呑みにするわけにはいかねえんだよ。『約束』を守りさえすりゃあ、そこから出してやる。さっさとやって、プリンスのところへ戻りゃあいいさ」
「……刀は揃ってんのか? なきゃできねえぞ」

 またニヤリと笑って、端にいた魔法使いに顎で指示を出した。
 エースと同じくらいと思われるまだ若い魔法使いが、微かに震えながら布に包まれた2本の棒状の物を抱えて歩み寄ってきた。そして、魔方陣の外側で立ち止まった。

「入らせるわけにはいかねえんでな。手間かけて悪いが、テメエで引き寄せてくれ」

 にやけたまま尊大に言う男には視線もやらず、チッと舌打する。

「おいおい、仮にも大事な相棒との再会だ。もっと嬉しそうにしたらどうだ? “魔獣”さんよ。しかし、“魔獣”なんて二つ名付けられるとは、大した魔法使いだぜ。なあ?」

 目だけを動かして男を一瞥すると、すうっと手を伸ばす。すると、抱えられていたものからゆっくりと布が外されていき、刀がその姿を半分ほど現すと、そのまま引き寄せられるようにゾロの手に納まった。
 真っ白な刀と、真紅の妖刀。

「それだけじゃ足りねえよな」

 今度は体ごと男に向き合った。

「三刀流の魔獣ってのは、悪魔の中での語り草だ」

 魔法使いからはざわめきが起こった。魔法界では、そんな話は知らされていないのだ。

「危険な魔法使いが万が一復活したとき、その力を半減させるために、魔法界では隠され続けてきた事実だ。アルビダ、よこせ」

 魔法使い達の視線が一気に集まる。アルビダがの腕には、細い鎖にグルグルと巻かれた刀が抱かれていた。ゾロの片眉がピクッと上がった。

「……どこにあった?」
「こちら側のミホーク卿の館に封印されていたの。探し出すのに本当苦労したのよ」「まだあるのか、そんな場所」
「私達が守って当然のお屋敷だわ」
「そのお屋敷に不法侵入したわけか」
「ふふふ。どれだけ甘美な時だったことか」

 快感に濡れた様な恍惚とした表情を、ゾロは綺麗に無視して、先程と同じように手を伸ばした。まるでグラスが割れたような、それでいてとても綺麗な音がして、刀に巻きついていた鎖が粉々に割れた。

「きゃああっ!!」

 弾かれたようにアルビダは刀を投げ出した。が、刀は落下することなく、そこに浮いていた。そして、そのままゆっくりと引き寄せられるように、ゾロの手に納まった。

「久しぶりだな、雪走」

 うっすらと笑みを浮かべて、小さな声で呟いた。
 その様子を眺めてから、男が尊大に言った。

「これで揃ったな。さあ、その力を存分に使って俺を生き返らせろ。天才魔法使い」

 カチリと、鬼徹の鍔が鳴った。
 ほんの1秒程だろうか。ゾロが魔法陣の中央に立ち、目を瞑ると、音もなくその全身をマントが覆った。そして、ゆっくりと目を開け、腰に3本の刀を携えた。 その様子に、魔法陣を囲む魔法使い達がどよめいた。
 魔法使いが羽織るマントは、目には見えないがぎっしりと文字が描かれていて、外からの攻撃から身を守る役割と、自身の力を出来るだけ無駄に放出させない役割を担っている。そのため、その作りの甘さは致命的なものになってしまう。つまり、それからもその魔法使いの力量が測られる。

「この程度で驚くな。テメエらの力が知れちまうぜ」

 ニヤリと傲慢に笑う男に視線だけやり、ゾロは白い刀を抜いた。
 誰もが口を閉じ、一挙手一投足を見逃さぬように見つめる中、ゾロが呪文を唱えた。それは、声を発したかどうかさえ分からないほどの小さな声。そして、唱え終わるとほぼ同時に赤い刀も抜き、2本を魔法陣の中央に突き立てた。
 その瞬間、突き立てた所から同心円上に光が風を伴って走り、ゾロの足元の魔法陣は、鈍い光で描かれた魔法陣が重ねられた。元々の魔法陣が消し飛ばないのは、その周囲を囲む魔法使い達が必死に抑えているからだ。
 必至の形相で魔方陣を守ろうとする魔法使いなど眼中にない様子で、ゾロは棺に視線を移した。

「おい。それを寄越せ」
「てめえで引き入れろ」

 そこで初めて周囲の魔法使いに目をやった。

「こいつら、どうすんだ」
「気にするな」

 その言葉に、一瞬周囲に緊張が走る。これだけの力でもって封じているものをさらに力ずくで破られたら、無傷でいられる訳がない。
 ゾロはさもつまらなそうに言った。

「わざわざ怪我人作る必要ねえだろ。俺は逃げねえし、封じ込めの魔方陣も消さねえから、その棺桶をこっちへ寄越せ」
「“魔獣”てえのは、随分とお優しいもんだ。プリンスのお守りで情が沸いたか」
「面倒が嫌いなだけだ」
「ふん。まあいい。おい、それを入れろ」

 棺の側で守るように立っていた2人の魔法使いが、緊張の面持ちでゆっくりとそれを運び始めた。魔方陣を取り囲んでいた魔法使い達が、恐る恐るその一部を開放する。そこからやはりゆっくりと棺を運び込んだ。宣言通りに何もせず、つまらなそうに突っ立っていたゾロの前に棺を置くと、2人は盗み見るようにゾロを見てから足早に魔方陣の外に出て、封じ込めの魔方陣を張るのに加わった。

|












「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -