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The wizard(53) [10.04.08.〜]


 そんなサンジを綺麗に無視して、ウソップは気になっていたことをエースに尋ねた。

「なあ、それ、サンジのホッケーのスティックと同じ役割なんだろう?」

 エースがクルクル回している指示棒を指差した。

「これ? そうだよ。自分の使いやすいものとか好みで選んで、念と魔法で作るんだよ」
「無視すんな、鼻!」

 そんなサンジをまたも綺麗に無視して続けた。

「ゾロのは? デカい魔法を使う時には必要だって言ってただろ。いくらゾロでも、死人を生き返らせるには、さすがに必要なんじゃねうのか?」
「さすが! 確かにそうだな。サンちゃん、知ってる?」
「いや、知らねえな。でも、多分刀じゃないか?」
「刀……」

 独り言のように呟くと、エースは水晶を覗き込みながら手帳をめくり始めた。
 その邪魔をしないようにか、ウソップは心持ち小声でサンジに尋ねた。

「何でそう思う?」
「剣士で魔法使いだってことだし、くいなちゃんを刺したのは白い刀だ。転生できるように逝かせるには、相当の力がいるからな」
「じゃあ、その白い刀がそうか?」
「可能性は高いと思うけどな。ただ、もう一つ、毬藻がテメエの首を斬った妖刀も可能性はある。妖刀を魔法使いが使う場合、大抵は‘杖’にしているからな。‘杖’にすることでようやく使いこなせるってことらしいぜ」
「らしいって、見たことねえのか?」
「妖刀なんざ博物館の収蔵物だ」
「博物館……」

 ウソップは、いまだ手帳に没頭しているエースを見た。

「ああ。エースなら知ってるだろうな」

 2人は静かにエースが何かを見つけ出すのを待った。
 程なくして、手帳を閉じ、エースが2人の顔を交互に見て言った。

「恐らくゾロは3本の刀を使っていたようだ」
「3本?」
「2刀流なら聞いたことはあるけどな」
「手帳の中に、『刀を揃えては駄目だ』という記述がある。ゾロの首を落とした妖刀と婚約者を刺した白い刀は、博物館の中に厳重に封印を施して保存してある。俺は実物を見たことがあるから、これは本当。もし手帳にある刀がこの2本のことを指すんだったら、博物館の中に2本とも保管してあるのはおかしいだろう? ちょっと解釈を広げて、髑髏とどっちかの刀だとしたら、ゾロの刑罰の術を掛けなおす時に、刀がある同じ建物の中に髑髏を運ぶのはおかしい」
「それ以外の刀があるってことか」
「そう。そして、それがきっとゾロの‘杖’だ」
「じゃあ、叔父さん連中は、それを手に入れたのか?」
「サンちゃん、髑髏以外に、何かないかい?」
「何で俺に聞くんだよ。そもそも俺は何も知らずに後を継げさせられたんだ。その辺の事は、エースが一番よく知ってんだろうが」

 サンジが憮然として答えた。

「そうだけど、先代がそれとは知らせずに何かを伝えていたんじゃないかなあと思ってね」

 何かあったかな〜と、また咥えた煙草をブラブラさせながら考え始めた。


* * * * *



 地下室というイメージとは程遠いほどの広い空間は、四方を魔方陣と不思議な文字で埋め尽くされていた。その床には一際大きな魔法陣が描かれ、その周囲を20人ほどの魔法使いが取り囲み、魔方陣の中央を凝視していた。
 今は伝説の様に語られている魔法使いが、実体を伴って横たわっている。
 優秀な魔法使いと強大な吸血鬼の‘子供’。死者をも甦らせた天才的な魔法使い。しかし、果たして本当に魔法であったのかどうかは、誰も実証しようがないまま時だけが過ぎた。

「ようやく長年の疑問が解決するな。魔法の成せる技か、それとも悪魔の血が成せる業か。まあ、俺としちゃあどっちでも構わねえが」

 一人霊体のままの男がにやりと笑いながら言った。そして、魔方陣に添うように置かれた棺に目をやる。

「そっちの準備はいいのか?」
「はい。滞りなく」

 そう言って、その側にいた魔法使いが数人掛りで恭しく棺を開けて見せた。
 中には、その霊体と同じ姿の肉体が納められている。当然死体だが、とても死後5年も経っているようには見えない。
 それを一瞥しただけで、男は妖艶な吸血鬼を呼んだ。

「アルビダ」
「なあに?」
「何じゃねえ。その色男の首尾は?」
「そろそろ薬が切れる頃よ。目が覚めたら、無口で従順な僕ではなくて、つれない色男になっているわ」
「自我が完全に戻るんだな?」
「ええ。完全に回復しているわ。いえ、完全とは言えないかしら?」
「……どういうことだ。事と次第によっちゃあ」
「あら、心配無用よ。体は私の僕からは抜けられなくなっているだけのこと」

 そういってちろとその真っ赤な唇から覗いた牙を舐めると、魔方陣を取り囲んでいる魔法使いの数人が真っ赤になった。

「おいおい、てめえらが反応してどうする。最近の魔法使いはガキの集団か?」

 くくっと馬鹿にしたように笑うが、すぐに止める。
 魔方陣の中の男が目覚めようとしている。ゆっくりと目が開けられ、赤い瞳が見えた。数度瞬きをし、ゆっくりと半身を起こし、真っ直ぐに霊体に視線をやると、瞳は赤から琥珀へと変わり、その視線は射る様にきつい力を放った。

「さーて、パーティを始めるか」

 霊体の男は、ニイと笑って、その視線を受け止めた。

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