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The wizard(51) [10.04.08.〜]


「ああ。そして、この鍵で開く場所に、何か俺達に伝えたいものがあるってことだ」
「どこの鍵だ? すげえ小せえよな」

 2センチほどしかないそれを掲げて裏表と眺めてから、ウソップはぐるっと部屋を見渡した。

「机の鍵かな?」
「いや、こっちだな」

 ウソップはスタスタと歩き、鏡台の前に立った。

「これ?」

 エースは、そこにある2つの引き出しを引いてみる。すると、どちらも鍵が掛けられてはおらず、中身は空だった。

「そっちじゃねえ。ここだ」

 そういって、閉じられた三面鏡に付けられた鍵穴を指した。

「鏡……」
「多分、これだ。開いていいか?」
「ああ」

 慎重に差し込み、回す。カチャッと小さな音がした。そっと鏡を開く。そこに映った三面鏡のテーブル部分には、1冊の手帳のようなものが置かれていた。当然こちら側にそんなものは置かれていない。
 ウソップはエースに場所を空けた。
 エースが鏡に向かって手のひらをかざすと、鏡いっぱいに魔法陣が現れ、その中心にエースがてを伸ばすと、それは鏡の中に吸い込まれるように入っていった。そして、中の手帳を掴み、またゆっくりと手を引き戻す。手帳が完全に出てくると、魔法陣は消え、鏡は何事もなかったように、あるがままのものを映し出していた。

「すげえ……」

 ウソップが感嘆して鏡に見入るのを余所に、エースは手帳をパラパラとめくった。

「何が書いてあるんだ?」
「何も」
「え?」

 ウソップが覗き込むと、確かに白紙だった。

「どういうことだ?」
「このままじゃ読めないんだよ」
「どうやるんだ?」

 エースはページを鏡に映してみるが、手にした手帳も、映っている手帳にも文字は見えない。

「駄目か。うーん……あ、そうか」

 ポケットを探り、鍵の入っていた水晶を取り出し、それを通して手帳を覗いた。

「大正解」
「読めるのか?」
「ああ」

 ウソップも覗き込むと、そこには綺麗な字で書かれているのが見えた。

「昔一般的だった方法だよ。それこそゾロが生きていた時代は、水晶は魔法使いのほとんどが持ち歩いているアイテムだったんだ。水晶は魔除けでもあるから、悪魔に読ませたくない密書なんかに使われたんだ。今じゃほとんど使われない方法なんだけどね」
「それを逆手に取ったってわけか」
「でも、鏡の中に隠すなんて魔法は、そうそう使えるものじゃない。それに、ゾロからのメッセージも書き込まれているから、間違いなくこれはゾロの仕業だよ」
「この手帳の持ち主は、サンジの母親だな」
「間違いないよ。さて、内容の検討といこうか」

 そういうと、エースは先ほどの椅子に座り、手帳を開いた。それは、監視者が代わるときにゾロについて伝えられること等を書きとめたものだった。
とはいえ、現状のゾロの状態と、それに対する注意事項程度のもので、経緯等はやはり何も書かれてはいなかった。
それでも、何も情報がないこととは比べ物にならないくらいのものであったので、エースはそれを吟味し、今必要な情報をピックアップしながらウソップに伝え、時にアドバイスを求めながら、読み進めていった。

* * * * *



「つまり、エースが考えた通り、あの体はゾロの本体か」
「冷凍状態の体を無理矢理起こして、吸血鬼の生命力と薬を使って、あそこまで回復させたってところだね」
「甦ったわけじゃないんだよな」「うん。甦るには、死なないと。ここに書いてある通りだとすると、ゾロは厳密には死んでいないから、甦ることは無理だ」
「死んでない……ことになるのか?」
「言うなれば、脳死の状態が一番近いのかな。脳死状態の体を冷凍保存されていたってところだね」
「あー、分かんねえ。さすがに想像力に限界が来ちまう」
「どういう手段でそうなっているのかとか、その解き方とか、書いていないから分からないから、あくまでも仮説だけど」
「まあ、ゾロが起きたってことでいいや」

 そのウソップの大雑把な様子に、思わずエースは笑ってしまった。

「しょうがねえだろ! 脱毬藻オバケってことでいいだろ、もう」
「そうだね。それでいこう。まあ、とにかく、ゾロが振りをしているだけってことは、少なくともサンちゃんは無事だってことだな」
「そうだな。それに、向こうも最後の切り札と考えてるだろうから、ゾロが必要なくなるまでは、サンジに手出しはしねえだろうよ」
「となれば、どこかに囚われの身なんだろうなあ……ん?」
「どうした……うわっ!」

 2人の体が不意に浮いた。エースは手帳と水晶をポケットに捻じ込み、とっさにウソップの腕を捕まえた。

「この部屋に飛ばされたときの感覚と似てねえかっ?」
「ああ。捕まってろよ」

 そのとき、小さな声が遠くから聞こえた。

「ウソップ!! エース!! どこだ?」
「サンジ!?」
「サンちゃん、無事か?」
「ああ! 2人は?」
「無事だけど、この状況は……」
「ひええっ」
「どうした!?」

 突然真っ暗になったかと思うと、一瞬体に圧力を感じ、次には光の中に放り出された。

「痛えっ!!」
「あ、ごめんね」
「2人共、大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
「今大丈夫じゃなくなった……早くどいてくれ」
「あ、ごめんね」

 そこは、サンジの部屋だった。




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