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The wizard(50) [10.04.08.〜]


* * * * *



 ゾロによって2人が飛ばされたのは、随分と長い間使われていない古い書庫のような部屋だった。

「何なんだ、この部屋は」
「魔法使いの書斎、かな」

 エースは周囲を見渡して言った。並ぶ本は、確かにサンジのところにあった不可思議な文字のものか、ラテン語のものだった。

「でも、使われていたのはそう古いわけではなさそうだ。ほら、この本の再販年月日」
「本当だ。少なくとも、ここは屋敷内だよな。そうすると、魔法使いだったっていうサンジの母親の書斎か?」
「そうみたいだ」

 そういって机に置かれた写真を指差す。そこには、ベビーベッドに眠る特徴的な眉の赤ん坊が写っていた。そして、そのベッドサイドには、髑髏の入った鳥篭。

「あはは、サンちゃんの言う通りだ」
「ゾロだと知ってるからいいけど、そうじゃなけりゃ相当な写真だよなあ」
「お、ツーショット写真だ」
「どれどれ?」

 お座りした赤ん坊のサンジが、満面の笑みで髑髏を抱えている。

「絶対よだれまみれだな、ゾロ」

 置かれた状況を忘れて、思わず2人揃って吹き出した。

「さてと、どうするかな」

 エースは軽く埃を払い、椅子に座った。

「なあ、エース。ゾロは亡霊じゃなかったよな。ちゃんと体を持ってた。あれは悪魔が甦らせたのか?」
「いや。完全に甦ったものじゃないよ。だってさ、髑髏は別にあっただろう?」
「あ、そうか。ってことは、あの体は誰のだ?」
「さあ。ただ、普通の人間の肉体なのは確かだよ。いや、普通ではないか。アルビダが関与している言い方だったからね」
「首にあったのは、血を吸った痕か」
「さすがによく見てるね。でも、それだけじゃないと思う。アルビダは薬師でもあるんだ」
「薬か。血を吸われた上に薬を使われて、本人の意思のないところにゾロが憑り付いてるって感じか?」
「うーん、それもちょっと違う。まず、あの体にほかの意思はない。かといって、死体じゃない。でも、悪魔と契約して甦らせた肉体でもない。と、なると、考えられるのは、1つだけなんだよねー」
「俺の頭の範疇を超えちまうんだけど……ゾロ本人の体ってことか?」
「うん」
「死体じゃなく、生きた体なのに?」
「そう」
「300年経ってる感じにゃ見えねえぞ。そもそもそんなことが可能か?」
「理論的に言えば、仮死状態で保存されていたなら、可能だな」
「まず、この時間の長さが理論的じゃねえだろ」
「まあね。これだけの年月、どういう形であれ肉体を維持させるには、どう考えたって魔法だけじゃ無理だ」
「悪魔の協力が不可欠だろうな。何せ、ゾロは首を落としてるんだからよ」
「そうだね。それにしても、流石敏腕刑事殿。魔法使いでも難しいのに、ちゃんと話についてきてくれる上に、理解もしてくれる」
「実際の現象としては、ついていけてねえけどな」
「十分だよ。本当にあんたがサンちゃんの友人でよかった」

 そういうエースの表情に、ウソップは訊ねてみた。

「立ち入ったこと、聞くけどよ」
「何?」
「エースは、サンジに惚れてるのか?」
「そう見える?」
「どう見えるかっていわれると、保護者的な要素が一番強く見える。けどよ、口説いてるような場面も見てるからな」
「やっぱり鋭いなあ」

 悪戯がばれたような笑顔に、ウソップもつられて笑みを浮かべてしまう。

「サンちゃんのことは大好きだよ。惚れてたよ。でも、違ったんだ。保護者的っていうのは的を得てるよ。気になるし、構いたくなる。でも、邪な気持ちが沸いたことはないなあって思ったときに、惚れてると思ってただけかって気付いたんだ。がっかりするより、ほっとした自分に呆れたよ。惚れてると思いながら、違和感が拭えないでいたからね」
「じゃあ何で今もサンジを口説くんだ?」
「面白いから。サンちゃんも、ゾロもね」
「悪いなあ、それ」
「でも、俺の特権だろ」
「ある意味な。エースしかできねえだろ」
「だろ? 楽しまなきゃ、損だ。でも、そろそろ楽しめなくなりそうだけどね」
「何でだ?」
「今回の件が終わったら、ゾロが開き直りそうだから」
「あー、確かにそうだな」
「どうせ開き直られるんだったら、毬藻オバケに戻らずに体を持った状態でしてもらいたいなあと、今思ってたりするんだよねー」
「エース」
「サンちゃんには元気でいてもらわないと、美味い飯が食べさせてもらえないし。と、いうことで、何か手がかりになるものを探さないと」

 そう言って椅子から立ち上がり、手を伸ばして床に座っていたウソップも立たせた。

「サンジの母親が元々はゾロの監視者だったんだ。何かあるはずだよ」
「そうだな」

 2人は手分けして、部屋の中を調べ始めた。
 程なくして、ウソップがエースを呼んだ。

「これ、おかしいぜ」

 指差したのは、本棚の一つに置かれた水晶の球だった。

「これだけ埃の被り方がおかしい」
「そうかい?」
「ああ」

 エースがそっとそれを手に取ってみる。角度を変えて見ると、中に鍵があった。

「これは魔法でやったのか?」
「恐らくね。何の鍵だろう」
「ちょっと見せてくれ」

 ウソップが差し出した手に、エースがその球をそっと置こうとした途端、中の鍵がストンと落ちて、ウソップの手に収まった。

「……手品かよ」
「ゾロ、か」
「え?」
「ゾロが、ウソップにだけ鍵が取り出せるように魔法を掛けたんだよ」
「ってことは、あのゾロの態度は嘘か」

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