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The wizard(49) [10.04.08.〜]


「まあ、簡単にいうと、悪魔と手を結んで世界征服を企んでるってところか」
「「は?」」
「いや、真面目だから」

エースとウソップは、思わず目を合わせた。

「なあ、サンジ。お前の叔父さんって、実はすげえお子様思考の持ち主か?」
「そんな可愛げあるもんじゃねえよ。かなり、ヤバいな」
「ヤバい事態になるわけだ」
「ゾロがしくじればな」
「またゾロか」

エースが両手を頭の後ろに組み、背もたれに寄りかかった。

「サンちゃん、ゾロって何?」
「何って……毬藻オバケ」
「いや、今のことじゃなくて、元々だよ」

毬藻オバケは否定しないのかよと、思わずウソップはツッコんだが、当然スルーだ。

「ゾロは、本当に魔法使いだったのかい?」

真剣な目で問い掛けた。

「そもそも、ゾロは人間なのか?」

その強い視線を、さらに強い視線で返す。

「何が言いてえ。事によっちゃあオロスぞ」

その低い抑えた声と冷たい怒気に、2人は一瞬息を飲んだ。こんなサンジは初めて見る。常に喜怒哀楽の激しい姿しか知らない。

「天才的な魔法使いといっても、その力が強大すぎる。おまけに、アルビダが関わっているのに、その支配下に置かれていないんだろう? それはもう……人間の能力で測れると思うかい?」
「くだらねえ。ゾロはゾロだ。どいつもこいつも何でそんなことも分かんねえんだよ」

小さな小さな掠れるような言葉。ウソップは、サンジの心の奥底に隠された気持ちを痛感した。
ゾロの髑髏を隠すことを嫌がるサンジ。それは、ゾロが確かに存在することの主張だった。どんな姿であろうとそれがゾロの在り方なら、それを消し去る権利など誰にもあるはずがないのだ。
自分は自分である。ただそれだけであると同時に、それが全てだ。
それは刑事であろうと魔法使いであろうと、人であろうとなかろうと、自分として必死に生きている姿を、俺は見てきた。そこに違いはなかったはずだ。亡霊だからといって、ゾロは違うと言えるのか。
ゾロはゾロ。
きっとそれは、サンジの中で一番守りたいことなんじゃないかと、ふと思った。

「なあ、サンジ」

 ウソップの声は、場違いなほど穏やかだった。

「お前の叔父さんのことは、ゾロしか止められねえっつったな。それは、魔法使いのお前らからすると、すげえ大変なことなのかも知れねえ。俺達の世界もきっと大変なことになるんだろうと思うさ。けどよ、正直実感なんかねえ。魔法だって、やっぱり今だに驚かされる。俺らからすると、やっぱり現実味がねえ世界の話なんだよ、魔法使いも悪魔もよ。
 それでも何で俺がここにいるのかっていったら、それはゾロを助けるためなんだよ。ゾロが今やろうとしていることは、危険なことなんだろ?俺には何にも力はねえ。でも、それでもゾロを助けてえと思うんだよ。俺にとっちゃ、亡霊だろうと何だろうと、ダチなんだよ。ダチが闘おうとしてるのが分かっていて、黙っていられるような男だったら、俺は刑事になんかなっちゃいねえよ」
「サンちゃん、俺達がゾロの邪魔にならないようにしつつもゾロを助けるためには、やっぱりちゃんとゾロのことを知ってないとだろ?人間でも人間じゃなくてもいい。ただ、ちゃんと知っておかないと、どこまでは心配いらないとか、判断できないだろ?」
「ウソップ、エース」
「俺達は、大丈夫だよ」
「あいつの正体がなんであろうと、今は毬藻オバケだしな」
「それよりも衝撃的な姿って、ないよね」

 2人で揶揄ってから、サンジの方に向き直す。その視線を感じて、サンジは軽く頭を下げた。

「悪い……」
「俺の言い方もよくなかったし、まあ、立場上、今までゾロに対していい接し方をしてこなかったのも事実だしね。サンちゃんが謝ることなんてないよ」

 そういったエースの笑顔は、いつもの茶目っ気のあるものだった。

「ゾロから聞いた話、できるだけ教えてくれるかい?まずは、ゾロの正体からだ。そして、卿の世界征服だったっけ? その話もね」
「ああ……」

 今度こそちゃんと話すために、サンジは頭をフル回転させ始めた。

「悪魔の‘子供’……。昔話の中の話だけじゃねえんだな」
「俺も思った。でも、エースは現実にそういうことがあったって知ってんだろ?」
「そりゃあね。これでもキュレーターだよ。一般社会でも、魔法界でも、ね」

 茶目っ気たっぷりに、ちょっと威張ってみせる。

「でも、さすがにミホーク卿に‘子供’がいたとは知らなかった。これも消されたんだろうね」
「徹底してるな。それだけ重罪ってことなんだろうけどよ」
「まあ、一般社会に魔法使いも悪魔も普通に存在していた時代から、それが絵空事に思われるだけの時間が経ったからこそなんだろうけどね」
「でも、今、ゾロは生きてここにいるんだ」

 そう呟いたサンジの顔は、小さな子供の様で、思わずエースはその頭を撫でた。

「そうだね。だから、俺たちはここに来たんだろう? ゾロを助けなきゃ。連れて帰ろう」
「ああ」

 サンジは漸く顔を上げた。その瞳には、いつもの強い光。それを見たエースとウソップは、ほっとして、目を合わせた。



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