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The wizard(45) [10.04.08.〜]


「それで、何でテメエは解凍されたんだ?」

 俺は冷凍食品か。

「契約なしに、死んだ自分を甦らせるためだ」
「アホな野望の為に?」

 ゾロは片眉を上げて応えた。

「そもそも冷凍庫の場所を何で奴が知ってるんだ? 俺が知らねえのに」
「冷凍庫じゃねえ」
「冷凍物は冷凍庫と相場が決まってんだ。細けえことはいいだろ。もっとポイントを絞って聞き取りやがれ」

 じゃあ細かいところにいちいちいろんなもん込めるような言い方して拗ねるな、襲うぞコラとか思うが、やっぱり口にはしなかった。

「俺の身体の場所は、ここの当主にしか知らされねえから、当然奴も知らなかったんだが、てめえが行方を眩ました後、捜しまくってた」
「何で見つけさせた? 誤魔化せただろ?」
「別に身体なんてどうでもよかったから隠そうなんざ思いもしねえ。俺を捜していりゃあてめえの方に矛先は向かねえしな」
「どうでもよかったって、身体を燃やされたら終わりだろうが」
「終わりじゃねえな。髑髏に縛られたままの状態には変わらねえ。生き返る時の入れ物がなくなるだけだ。また生きたいと思っちゃいなかったから、俺にとっちゃどうでもよかったってことだ」

 悲しいことを何の感慨もなく話すゾロが哀しくて、聞こえないように小声で呟いた。

「大事にしやがれ、バカ」
「あ?」
「何でもねえよ。俺が冷凍庫の場所を知ってると思って、向かってくる可能性は?」
「奴は母親がお前に告げていないことは分かっているだろうから、それはねえだろう」
「なあ、奴は何でてめえが死者を甦らせられることを知ってたんだ?」
「奴は評議会上層部だっただろうが」
「ああ、そうか。でも、何で今動いたんだ? 最近テメエを見つけたのか?」
「いや、見つけたのは最近ってわけじゃねえ」

 サンジはちょっと首を傾げ、目だけ斜め下にやる。考える時によくやる仕草だ。伏し目がちになるその表情は、ゾロのお気に入りの一つだ。

「冷凍庫の場所は見つけていたけど、扉の開け方や解凍の仕方は分かってなかった、か?」
「ああ」
「さすが俺♪」

 正解して得意気な時は、打って変わって子供のような満足そうな笑顔になる。
 ずっと見てきた。ずっと守ってきた。これからもだ。

「上層部でも、議長やらの最高幹部じゃなきゃエースが読んだ程度しか知らねえ。だが、悪魔の中にはそれより知っている奴は山程といる。大概話さねえがな。そこで奴らはあの女に目を付けたんだろう」
「あの女じゃねえ、アルビダお姉様だ」
「吸血鬼で野心家だ。ミホークの血で十分釣れたんだろうよ」
「スルーしやがったな」
「細かいことはいいんだろ」
「そこは細かくねえ!」
「一番細かいじゃねえか!」
「どんな時であろうと、レディを蔑ろにすることは許さねえ!」

 言いながら、サンジはゾロの眉間を指でぐりぐりと押した。
 ゾロはそのままサンジの指をひっつかんだ。

「いい加減にしやがれ」

 抑えた低い声に、サンジは少しうろたえた。本気で怒っている。

「あの女が言ったこと、忘れたのか? 狙いはてめえだっただろうが。そんな奴にこっちはベタベタ触られるわ咬まれるわで、忍耐使い果たしそうなんだよ。これ以上あの女の事でグダグダ抜かすな」

 怒鳴るでもない、這い上がるような怒気に、サンジは思わず無言で頷いた。
 分かりゃあいい、と指を離した。

「今の評議会の上層部に不満を持つ魔法使いで、奴の妄想に同調する輩は意外に多い。上層部の中にもいやがる。あの女からの情報と、上層部の魔法使いを取り込んで奴は着々と準備をしてきて、今回にタイミングを合わせたってところだ」
「今回?」
「俺の召喚時期」
「何で?」
「召喚中、最高幹部は篭もりっきりになるから、上層部内の奴側の連中は、何かと動きやすい。必要な道具も盗み出せる。召喚後の俺はダメージがでかいから、髑髏を手に入れるにはこのときしか無理だ。問題は、てめえだ」
「俺?」
「この屋敷に何かあったら、てめえはすぐ分かるだろう? それを感じさせないためには、てめえを封じる必要がある」
「……独房か」
「あそこにいる間は、一切から切り離されるからな。てめえが独房の中にいて、最高幹部が篭もりっきりで、かつ地獄が嬉々として俺を甚振っている間に、屋敷内の俺の身体を覚醒させる準備をしたってことだ。そして、全てが整った後、最後の仕上げに俺を髑髏から切り離して肉体に戻した」
「……そして、今度は俺を楯にして、テメエに自分を生き返らせる魔法を使わせようとしているのか」
「地獄連中とは、大分話がついているらしい。奴の復活と、てめえの再生。その後、魔法使いに喧嘩を売るみてえだな」
「俺の、再生?」

 突如出てきた自分の話。何故自分がと、予想外のことに面食らった。それも、再生だという。

「俺は殺されるのか?」
「いや、“入れ物”だ」
「あ?」
「魔法使いと契約を交わさない限り、悪魔はこっちの世界では実体を持たねえのは知っているな? それ以外で実体を手に入れるには、入れ物が必要なんだ」
「つまり、悪魔が乗り移るってことか?」
「いや……まあ、いい。簡単に言えばそんなもんだろ。但し、悪霊が憑くのとは訳が違う。その入れ物如何で、悪魔は強大な力を発揮できることもある。お前は、その魔法の能力の為に、指名されたらしいぞ」
「さすが、地獄の悪魔にまで届く、この俺様の天才っ振り! でも、俺が受け入れなきゃいいだけだろう? 返り討ちにしてくれる!」
「絶対だな」
「あったりまえだ!!」
「何があってもだ。約束しろ」

 サンジはあからさまに、むっとした。ゾロは、滅多なことでは約束を口にしない。そのゾロが約束しろという。

「何を知っていやがる」
「いや」
「そんなわけねえだろ」
「エースやウソップが捕まってるからな。あいつらは絶対俺が何とかするから、何があっても、てめえはてめえを死守しろ。その身体、誰にもやるなよ」

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