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The wizard(41) [10.04.08.〜]


「領主って地位には相変わらず無関心だったが、領民を守ることは性にあったらしくてな。元が剣士だし、母と一緒に戦えるのも楽しかったみてえだ。
 そんなんだったから、悪魔が領主になることも領民は寧ろ喜んだ。母が嫁いだこともな。結婚した時の祝福振りは、俺の記憶にあるくれえだ。
 だから、『子供』を持つこともあっさり認められた。ただ、その時、2人は新しく子供を迎えるのではなく、俺を『子供』にすることを選んだ。だが、俺は既に4歳。そこまで成長してから『子供』にした例はなかったから、一つの賭だったようで、結構揉めてたな」

 ゾロの胸から顔を上げ、琥珀の瞳に問い掛ける。

「覚えてるのか?」
「ああ。死んだ親父以外の子供を息子と思える自信がねえからと、自分の我が儘の選択だと、母親に謝られた。お前の人生だから、選択権はお前にある、無理に『子供』になっても仕方がないと、領主は言った」
「4歳のガキにか。で、てめえは飲んだってわけか」

 その金色の瞳の上級悪魔の血を。

「その頃はもう領主に剣術を習っていてよ。その息子になることにためらいはなかったかし、その方が母親が喜ぶと思ったからな」
「お母様のためか。偉いぞ、子毬藻」

 眉間に思いっきり皺を寄せたが、諦めたのか、文句は言わなかった。

「あの領主、剣士としては長けていたけどよ、人っつうか悪魔としてはどこか変な奴で、そこはちっと悩んだがな。俺に飲ませる血なんざほんの数滴だから、そのままくれりゃあいいのによ。わざわざ牛乳に混ぜて寄越しやがったんだぞ」
「へ?何で牛乳?」
「見た目だけでもいちごミルクみてえになって飲みやすいだろうって。コップ一杯の牛乳に血を数滴だぞ。色なんか大して付かねえくせに、血の味は牛乳より強えんだ。血だけなら一舐めで終わったのに、コップ一杯だぞ。お陰で牛乳はいまだに嫌いだ」

 本当に嫌そうな顔で吐き捨てる。それを見て、サンジは爆笑した。

「ぶわっはっはっは!! な、何だそれ!! 儀式とか、普通するだろ、牛乳、いちごミルクって、あはははは!! 腹痛え、ひー!!」
「訳分かんねえだろ。血を与える数秒のために、わざわざ儀式なんざ無用とかもっともなこと言いながら、やったことはそれだ。思考の予測ができねえ。
 そういう意外性が人気の一因だっていう奴もいれば、あまりに意外過ぎてショック受ける奴もいたな」
「金の目は、年齢いってから血を飲んだからじゃなくて、牛乳と混ぜたからじゃねえの?あーやべえ、もういちごミルク飲めねえ」
「言ってろ」

 まだ肩を震わせて涙目で笑うサンジを、相変わらず睨み付けた。

「年齢だけじゃねえ。母親も強かったからな。強え魔法使いの血と、強え上級悪魔の血が、何らかの作用を起こしたんじゃねえかってな」
「強え上級悪魔?」
「ああ」
「俺も知ってるか?」

 珍しく躊躇した面持ちで、ゾロは返答しなかった。

「知ってるな。昔話にありそうだよな」

 魔法使いも魔物も、得手して逸話が一人歩きするものだ。
 ゾロの罪のように。

「剣士で人気者ねえ。領主……領主!? まさか」
「俺は答えた方がいいか?」
「当たり前だ、ボケ! ミホークだな?」
「ああ」
「マジかよ! 俺がガキの頃大好きだった話じゃねえか! てめえ、俺がどれだけ憧れてたか知ってるだろ? 鷹の目と赤足は俺のヒーローだったんだぞ! 教えやがれ! ってことは、その金色は鷹の目譲りか。羨ましい〜!! 見せろ、ほれ」
「痛っ! 瞼引っ張っても出てこねえよ、アホ眉毛!!」

 ゾロの顔を弄り捲っていた手がピタッと止まる。

「……鷹の目が、いちごミルク……」
「おう」

 がっくりとうなだれ、ゾロの胸に倒れ込んだ。

「あのおっさん、あのナリで甘党なんだ」
「生クリームとかすげえ好きだったりとか?」
「苺乗っけてやると喜ぶぞ」
「苺好きなわけ?」
「おう。だからイチゴミルクなんて考えたんだろうな」
「鷹の目がイチゴミルク〜〜〜」
「それがあれば血はいらねえとか言ってたしな」
「血?」

 ゾロの胸に突っ伏していた頭を上げた。

「ああ。鷹の目は元々吸血鬼だ。忘れたか?」

 顔に掛かる前髪をかき上げ、頬を撫でながら話す瞳は、相変わらず琥珀だ。

「だからあの女に咬まれたところで何もなりゃしねえ。くいなはそう言わなかったか?」
「いや、金色の目を持っているから下っ端の魔力は効かねえだろうって」
「相変わらずの適当さだな」
「レディに向かって失礼な言い種は許さねえぞ」
「てめえこそ、この状況で女の肩持つか?」
「ひゃっ!」

 背中から足の付け根まで指でなぞり、一度だけ間にも指を滑らせてから小振りの尻を軽く揉む。

「それこそこの状況で止めろ! まだ話が山ほどあるだろうが!」

 一気に真っ赤に染まった全身に、ゾロのソレが反応した。

「……まあ不可抗力だ。気にするな」
「………………」

 サンジは、ゆっくり重なった体をずらし、またゾロの横に俯せて並ぶ。自分も、ほんのちょっととはいえ兆してしまったことはバレないように。

「えーと、何だ。あ、そうか」

 ゾロは片眉を上げる。

「何がだ」
「だから、アルビダお姉様が毬藻にご執心な理由。毬藻が鷹の目の『子供』だからか」
「そういうことだ。厳密に言やあ、俺の中の鷹の目の血が欲しいんだろ」
「そうだったのかあ」

 少し安堵したような言い方に、ゾロは笑いを堪えた。

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