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The wizard(40) [10.04.08.〜]


 ドサッと隣に寝転がった振動でベッドが軋んだ。
 二人して荒い息を吐き出した。

「絶倫毬藻〜……」
「褒めるな」
「褒めてねえよ、むっつりサボテン」
「……これくらいじゃ絶倫言わねえよ。期待に応えてやろうか」
「ちょ、ちょっと待てっ!!初めてだってのに。ちっとは労りやがれ」
「さすってやるか?」
「いるか、バカ。腕、貸せ」

 あーだるいーとかブツブツ言いながら、ゾロの腕を引っ張り、頭を乗せた。
 ゾロはちょっと面食らった顔をした。それを見たサンジはニヤリと笑う。
 すると、ゾロはその腕の肘を曲げた。金色の小さな頭はコロンと転がり、ゾロの肩に収まった。
 キョトンとするサンジの表情に、今度はゾロがニヤリと笑った。
 文句を言われる前に、額に小さなキスを落とすと、サンジは瞬時に真っ赤になる。耐えきれず、ゾロはくくくっと笑った。

「人の反応で遊ぶんじゃねえ!」
「いてっ」

 腹いせにデコピンしてやったが、ふと思い出した。

「髑髏……」
「あ?」

 上げようとした頭を抑えられ、仕方なさそうに腕枕のままゾロを見た。

「この中、何入ってるんだ?」
「水晶だ」
「悪魔が水晶の髑髏かよ。めちゃくちゃだな、さすがは毬藻」
「毬藻じゃねえし、悪魔でもねえ」
「それ、くいなちゃんもよく分からないって言ってたんだ。悪魔じゃねえんだよな?」
「ああ」
「何で金色の瞳を持ってるんだ? オマケに首落としても死んでねえし、それどころか年取ってねえだろ、この体」

 手を首にやり、眉間に少し皺を寄せてちょっと視線を外した。考えているときのゾロの仕草だ。

「くいなに俺の親の話は聞いたか?」
「ああ。魔法使いのお母様が、子毬藻連れて領主をしていた悪魔に嫁いだって?」
「子毬藻って何だ」
「何だかすげえ人気と実力のある領主だったらしいな」
「ああ。『子』を授かる許可が出たくれえだからな」
「子供?」

 悪魔には血の繋がりというものはない。生殖能力がないからだ。
 人と魔物と魔法使いが、当たり前に共存していた時代、人間と共に生きるうちに、『子供』という概念を覚え、欲しがるようになる悪魔は少なくなかった。
 その多くは、まだ子供の悪魔か人の子を引き取って『家族』を作る。『家族』の中で育った悪魔は、社会のルールを覚えて成長するため、歓迎される風潮さえあった。

 その中で、極稀な例として、「血の繋がり」を許される悪魔もいた。

「人間の赤ん坊に悪魔の血を……」
「まあ与えるといっても、一滴二滴って量だけどな」
「本当にあった話なんだよなあ。昔話の世界だぜ。で、赤ん坊はどうなるんだ?」
「ほとんどの場合、何かの力を得る。といっても、人の持つ能力の範囲内でだ。ちゃんとコントロールは利くし、力を発揮しなけりゃ『子供』だとは分からねえよ」
「力って、例えば?」
「学力が飛び抜けていたり、足が速かったり、怪力だったり」
「特化した才能か。エスパーってところか」
「今の超能力者は、そいつらの血の名残の場合が大半だ」
「へえ。魔法使いになる奴も?」
「稀にな」
「じゃあ、てめえもそのクチか」
「ああ」

 金の瞳もそのせいかと思いながら、何か釈然としない。う〜んと思考を巡らせている間、ゾロは黙って金の髪を梳いていた。
 そうかと、ガバッとサンジは身を起こして言った。

「力を発揮しなけりゃ『子供』だと分からねえっつったな。超能力者になるだけだと」
「ああ」「外見的な変化はねえてことだな」

 サンジを見つめる瞳は、今は琥珀だ。

「『子供』はあくまでも人間だ。金の瞳は上級悪魔の持ち物だ。だからくいなちゃんは分からなかったのか。てめえが本当に『子供』なのか、それとも悪魔なのか」
「で?」
「で、って?」
「くいなは俺を『子供』だと思っていた。だが、この目を見たときから悪魔だと思ってる。少なくとも疑念は抱いている。今でもな。お前はどれを望む?」

 琥珀の瞳の奥が微かに揺れるのを、サンジが見逃すはずもない。蒼い瞳を挑発的に合わせたまま、小馬鹿にするようにニヤリとしてみせる。

「さっき言っただろうが。てめえはてめえだよ。毬藻ちゃん」
「毬藻じゃねえ」
「てめえなんざ毬藻で十分なんだよ」

 たまらなくなって、ゾロはサンジを引き寄せた。

「バーカ」

 サンジは抗うことなくゾロの胸に頭を乗せ、クスクスと笑っている。耳を当てた胸からゾロの鼓動が伝わる。そのことに比べたら、そんなことはどうでもいいことだ。

「俺が血を与えられたのは、赤ん坊の時じゃねえ。確か4才の頃だ。」

 ゾロが初めて自分の過去を語り始めた。


* * * * *



「そこの領主は、代々子供に継がせるんじゃなくて、実力を認めた者を後継者にしてきたらしい。そんな中に、上級悪魔の剣士を後継者に指名した領主がいた。その悪魔が、まあ父親だな。母親の血筋は代々領主付きの魔法使いだったから、それで知り合った」
「本当の父親は?」
「俺が生まれてすぐに病死した。外見は俺とそっくりだぞ」
「毬藻の子は毬藻かあ」
「だから毬藻じゃねえ」

 胸に耳をあてたままクスクス笑うから、そのたびに揺れる金の髪がくすぐったい。

「その悪魔、上級なのにこっちに居着いたのか?」
「向こうはつまらなくて暇だったらしい。地位やら権力には興味なかったからな」
「でも、領主になったんだろ?」

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