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The wizard(32) [10.04.08.〜]


 俺のものって、何言ってやがる、いつの話だ。
 あ、でも、ちょっと待て。さっきの言い種だと、後悔……とか?

「本当に分かりやすい奴だな」

 くくっと喉の奥で笑って続けた。

「刷り込んだかもしれねえ。ただそれだけだ。でもまあ、そんなきっかけも悪かねえだろ?」

 チュッと可愛らしい音を立てて、初めてゾロからキスされた。

「一応言っておかねえと、後でごちゃごちゃ考えられても面倒だからな」

 大好きなガキ臭い笑顔。頬に触れてみる。触れられる。意外に滑らかな……ん?

「そうだっ!!」
「うぉっ!?」

 腹の上に跨ったまま、胸倉を掴んで起き上がった。

「毬藻! コレはなんだよ!!」
「押し倒したり、引き起こしたり、てめえは……」
「うるせえ!! この体だよ、体!!誰のだ?知らねえ死体に乗り移ってとかだったら、俺はゾンビとチューかましたことになるじゃねえか!!」

 ……このアヒルが。

「知らねえ死体じゃねえ。正真正銘、俺の体だ。でもって、ゾンビじゃねえ」
「……本物のお前?」
「おう」
「腐ってもねえし、干からびてもねえぞ」
「ゾンビかミイラになってりゃいいのかよ」
「髑髏は向こうにあったぞ。この中身は空か?」
「痛えっ!」
「痛覚とかありやがる」
「……いい加減にしやがれ」
「うるせえ、大問題だろうが。俺に死姦の趣味はねえ。百歩譲って、毬藻の死体なら撫で回してもいいが、最後までなんかできるかよ」
「俺の死体なら舐めんのか」
「舐めるじゃねえ! 撫でるだ、撫・で・る!! アホエロ親父!!」

 てめえの方がすげえこと言ってる自覚はねえのか。思わず大きな溜め息をついた。

「こら、むやみに死臭を放つんじゃねえよ! ……って、あれ?」
「今頃気付くな」
「何で死臭がしねえんだ、コラ」
「死体じゃねえからな」
「自分で自分の首、落としたんだろ?」
「おう」
「普通死ぬだろ?」
「おう」
「死んだのに死体じゃねえって?」
「普通じゃねえからな」
「???」
「おら、手ぇ貸してみろ」

 サンジの右手を取り、自分の左胸に当てようとする。
 触れる寸前で、サンジの手が止められる。
 片方の眉を上げて顔を伺うと、少し泣き出しそうな表情に見えた。
 ゾロは、意識していつものようににやっとして見せた。

「怖がってんじゃねえよ」
「誰が!」

 左手に力を入れ、サンジの手を引き寄せ、自分の胸に当てさせた。
 どことなく不安を滲ませていた表情は、嬉しさと戸惑いにわずかに紅潮した。

「動いてる……」
「だから死体じゃねえって言ってんだろ。分かったか、グル眉」

 その台詞を綺麗に無視して、サンジはそのままゾロのシャツを勢いよく捲り上げた。

「今度は何だ!」
「すげえ傷跡……亡霊のテメエのと同じだ」
「こんな傷、ほかに見たことあるか?」
「これだって、本物は初めてだ」

 恐れを抱くように、そうっと手を伸ばしてくる。

「くすぐってえ」
「そうか」

 傷に触れていた手を、ゾロの肌から離さずに心臓の上まで辿る。シャツの上からよりもはっきりと伝わる心音。

「動いてるな」
「おう」
「すげえな……すげえ。これがお前か」
「おう」

 聞きたいことは山程ある。

「何から聞いたらいいか分かんねえよ」
「浮かんだものから聞きゃあいい」
「ゾロ」
「ん?」
「俺が……欲しいか?」「ああ、すげえ欲しい」
「即答だな」
「逃げられねえうちにな」
「誰が逃げるか、バーカ。逃がしてなんかやらねえよ」

 視線を合わせたまま唇を重ね、どちらからともなく奪い合うように舌を絡ませた。




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