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The wizard(31) [10.04.08.〜]


「くいなちゃん、謝ってた。酷い事を言ったって」
「謝る必要ねえ、当たり前のことだ。悪魔と対峙した奴が、この目を知ってて怖がらない方がおかしいだろう。特に、あいつは殺されたんだ。当然だと、そう言ったんだがな」
「俺は怖くねえぞ。初めて見た時も、今も」
「5年前か」
「ああ」
「何故聞かなかった?」
「目のことか?」
「ああ」
「どうでもよかったからな」

 また、片方の眉を上げる仕草。

「テメエがテメエなら、それでよかったんだ。大罪人でも霊体でも悪魔でも、何でも構わなかった」

 軽く見張った瞳に、俺が映っている。
 ゾロがいる。消されてなかった。側に気配がある。無事だった。今更だけど、今物凄いリアルにその事が感じられた。
 もう駄目だ。
 堪えきれない涙が伝う。

「ゾロはゾロ。それが全てだ。それ以外、どうでもいいことなんだ。だから、勝手に消えるな」

 そっと伸ばされた両手で頬を覆われ、親指で涙を拭われた。初めての手の感触に、後から後から涙が溢れる。

「大体、なんだ金色って。生意気なんだよ、毬藻のくせに。そこは緑にしておけよ」
「アホか」

 左手は髪をかきあげるように頭の後ろへと滑り、そのまま引き寄せられて、広い肩に押し付けられた。さっきの枕と同じ匂いがする。
 右手は背中に周り、ポンポンとあやすように叩く。

「ガキじゃねえ」
「あの頃はしてやれなかったからな。今されとけ」
「テメエがしてえだけだろ」
「したくても出来なかったからな。今のうちにしておく」
「それだけかよ」
「何が」
「俺にしてえことだよ」

 目の前の咬まれた跡に舌を這わせた。ピクッとしか反応しない首筋にイラつく。

「アルビダお姉様とイイコトしまくって満足ってか」
「してねえ」
「咬まれてんじゃねえか。何百年分溜まってたんだろうが」
「死体が溜められるかよ。咬まれただけで寝てねえよ」
「すげえイイらしいじゃねえか」
「知るか。あんなんで勃つかよ」
「テメエ、不感症?あ、不能か」
「目が紅くならねえくらい効かねえっつったのはてめえだろうが!」

 心なしか、目元が赤い気がする。

「テメエのしてえことは、これだけかよ」
「ああ!?」
「ガキみてえにあやしてりゃあ満足か」
「絡むな! 何が言いてえ、何がしてえ、俺にどうしろってんだ。分かるように話せ! いつも言ってるだろうが!」

 いつだってそうだ。俺の出方を見て、先回りして、ガキ扱いして。
 聞きてえことも、言いてえことも山程ある。ウソップとエースのこと、クソ野郎のこと。くいなちゃんに聞いた話の詳細。
 でもなあ、全部ぶっ飛んだ。
 どうせガキさ。
 ガキだから、狂いそうに焦がれた、夢でも諦めたことが現実として目の前にあって、抑えきれるわけねえ。
 胸倉を掴んで押し倒した。腹の上に跨って、顔の両側に手をついた。

「分かるように? 何がしてえって、テメエに触れてえ。どうしろって、俺に触れよ。でもな、何が言いてえって、それくらいはテメエから寄越しやがれ!!」

 止まっていた涙がまた流れ、驚いて固まったゾロの頬に幾つも落ちる。
 目を見たまま、ゆっくり近づき、触れるだけのキスをした。
 触れられることに胸が痛くなる。

 ゾロと本当にキスできた。

 もう一度キスをすると、大きな手が頭に触れてきて、俺は目を閉じた。


* * * * *

 啄むようなキスを、ゾロはただ黙って受け止めていた。金の髪を撫でる手は不似合いなほど優しい。

「おい」
「ん?」
「おい」

 呼ばれても、繰り返しキスをする。ペロッと唇を舐めてみる。
 クンとかるく髪を引かれ、唇を離して金色を見つめる。

「何だよ。させろ」
「いいから聞け」

 拒絶の言葉なんか聞きたくねえ。それが伝わったのか、苦笑して、俺の頬を軽く撫でた。

「俺は、お前が生まれた時から知ってる。お前が1人の時はいつだって側にいた」
「親父に連れて行かれた時は一緒じゃなかった」
「その間は、必ず親父さんかじいさんが離れなかっただろ? 1人にさせなかった筈だ」
「だったらなんだよ。気の迷いやら勘違いじゃねえぞ」
「刷り込みしちまったのかもしれねえから、先に言っておこうと思ってよ」
「あ?」
「俺のものだと思ってたから、そのままガキのてめえに刷り込んじまったかもしれねえ」

 ………………はい?
 今何だかとんでもねえこと言われた気がする。

「すげえ真っ赤」
「うるせえ、変態!!」

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