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The wizard(24) [10.04.08.〜]


「……やらないだけで、できるのか?」
「俺の記憶が本物ならな。ガキの頃だったから確信はねえ。ただ、念の力は、普通の魔法使いの倍以上なのは確実だな」

 倍じゃきかねえか、と何でもないように呟いているが、それを聞いたエースは黙ってしまった。

「おーい、俺にはさっぱり分かんねえよ」
「あ、わりい。要は魔法の掛け方の話だ。魔法使いはただの人間だ。ただ、普通の人よりちょっと力の使い方を知ってるだけだ。魔法をかけるときに、自分の念のエネルギーを使うんだけど、少ないエネルギーでできるものは念だけでできる。こんなふうに」

 そういうと、サンジの手元に愛用のホッケーのスティックが引き寄せられた。

「まあ、超能力者と大差ねえか。でも、念じるだけじゃ足りねえ時は、物や文字の力を借りる。だから魔方陣とか呪文とか杖とか……俺はこのスティックだけど、そういうものが必要になる」
「ゾロは、その念のパワーがすげえってことか」
「ああ」
「でもよお。じゃあ、何で簡単に布なんか被せられたんだ?」
「俺もそう思う。簡単に跳ね飛ばせたんじゃないかい?」
「そんなことしたら、ばれるじゃねえか。あくまでも普通でいようとしたんじゃねえか?」
「バレたら、そんなに大変か? 誤魔化せねえ?」
「バレたら恐らくはサンちゃんの手元からは取り上げられる可能性は出てくるね。誤魔化すのは……できたかも」

 エースらしい、いたずらっ子な表情をした。思わずウソップもつられて笑った。
 苦笑しながら、サンジが言った。

「確かに誤魔化せただろうけどな。多分アルビダお姉様を警戒したんだろうよ」

 『評議会に追われるのはアナタなんですもの』

 そう言われたときのことを、2人に説明した。

「いつも半人前扱いしやがって!」
「そりゃそうだろう」
「ああ!? 何か言いやがったか、鼻!」
「いいえ、何でもございませんっ!!」

 ついうっかりしてしまった。ことゾロに関しては火に油を注ぐ発言はご法度だ。

「そう簡単なことじゃなさそうだ」

 エースが深刻な表情になった。

「ゾロのその力のことを知っているのは、サンちゃんだけかい?」
「だろうな。そもそも毬藻と話したことがある奴自体、すっげえ限られてるし」
「生死問わずだ」

 煙草を持つ指がピクッと反応した。
 ゆっくりエースと目を合わせる。エースの瞳に笑みはない。

「何故そんなことを聞く?」
「上司たちが話しているのが聞こえてきたんだけどね。全く意味が分からなかったんだよ」

 サンジの表情が硬くなる。

「サンちゃんは『クロコダイル卿のおっしゃる魔法使いの使命』って、何のことか分かるかい?」

 サンジの表情が一変した。

「奴は死んだ!」
「サンちゃん、落ち着いて」

 舌打ちし、握りつぶした煙草の代わりに新しいそれに火を付けようとするが、なかなか上手くいかない。

 サンジの剣幕に、ウソップはかなり驚いた。

「それは誰なんだ?」
「クロコダイル卿は、サンちゃんの伯父だよ。5年前に亡くなられるまで上層部にいらっしゃった。彼を慕う者は多くてね。今だに死因について噂が絶えない」
「死因に疑問があるのか?」
「心臓麻痺だからね、どうとでも」

 ウソップは小声で聞いた。

「サンジは相当嫌ってたようだな」
「ご存命の頃はそうでもなかった気はするんだけどね」

 エースもウソップに耳打ちするように声を潜め、続けた。

「だから、卿の死にサンジが関わってるって噂が一番多い」
「……なるほどな」

 ウソップは思案を巡らしているような顔をしたが、それ以上追求してはこなかった。
 その代わりにもう一つの疑問を口にした。

「その男がいう『使命』ってのは何だ?」
「さあね。さすがにガキだったから、卿のことは俺もよく知らないんだ。迂闊にいろいろ探る前に、取りあえずサンちゃんに聞いてからにしようと思ってさ」
「賢明な判断なんだろ? サンジ」

 サンジは、イラつきを何とか抑え平静を装おうとしているが、なかなか上手くはいっていない。

「そう思う」

 皮肉めいた笑みで、エースに言った。

「ゾロの力を見たのは、俺とあの男だ」


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