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The wizard(23) [10.04.08.〜]


「生まれたときから」
「赤ん坊の時からか」
「その前からだな。実際出産にも立ち会ってるんじゃねえ? 母は魔除けにゾロを利用してたらしいからな」
「「魔除け?」」

 思わずエースも反応した。その辺の詳しい事情は、さすがのエースも知らない。

「当時の毬藻、結界もかなり強くて、特に悪魔だとかは近寄りもしなかったらしい。まあ、生きている時に散々狩ったから、恨みもたくさん買っていたことを自覚してたんじゃねえか? 独りずっと引き篭もってたそうだ。母に言わせれば『拗ねていただけだ』ってことだけどな。文句の一つもなく、ただ大人しく引き篭もっていたから、魔除けのお守りにちょうどよくて、妊娠中はずっと手元に置いていたし、出産後はずっと俺の隣に置かれてたって話だ」
「赤ん坊の横に髑髏かよ。シュールだな」
「横どころか遊び道具だったって」
「「はあ?」」

 驚いて、エースとウソップと二人、目を見合わせた。

「初めてゾロが姿を現したのは、母が俺の側から離れているときに俺が泣き出したことを知らせに来たときなんだってよ。で、これは便利だと思った母が、子守りをゾロに押し付けた。悪いもんは寄ってこねえし、髑髏はいい玩具だし、そのうち魔法の家庭教師にもなるからお得だってよく言ってたな」
「「……」」
「何だよ」
「いや、いろいろ突っ込みどころは満載なんだけどよ……」
「うん。それに、なんだかもうゾロには敵わないんだと最後通告突きつけられた気がするよ」
「?」

 違った意味でそれぞれがっくりと肩を落とし、疲れた風でさえある2人の様子に、サンジは訳が分からないという顔をした。

「まあ毬藻とのことは後回しでいいだろ? 取りあえず話を戻せ」
「あ、ああ、そうだな。目的は疑問が残るが、その女が関与しているのは確実だろうな」
「鼻! その女とは失礼だぞ!アルビダお姉様だ」
「鼻の方が失礼だろうが!」
「どこがだ」
「まあまあ。とにかく、アルビダは何か知ってるだろうね。布の出所も彼女の可能性が高いと思う」
「でも、当の本人はサンジの店には来てないんだろう?」
「いらしてたらご挨拶していないわけがねえ」
「俺もいたからね。そっちの誰かが店にいたら分かるよ」
「普通の人間の共犯か。それを探るのが当面の俺の仕事ってわけだな」
「さすが敏腕刑事さんだ♪ 話が早いねー」
「それだけじゃないんだろ、エース」

 新しい煙草に火をつけながら、サンジが口を挟んだ。

「こっちの内情ってのはまだ聞いてねえ」
「そうだね」

 エースの瞳から笑みが消えた。
 ウソップは何となく姿勢を改めた。

「上司とほかの代表者が会っていたときの会話が少しだけ聞き取れたんだ。今後の魔法界の在り方をめぐって、どうやら今上層部は真っ二つに割れてるらしい。代表者会も、その上もね。まあ割れてるというより、反乱を企ててるって感じだけどね」
「穏やかじゃねえな」
「うん。その穏やかならざる方にうちの上司がいる」
「人間くせえな」
「魔法使いも人間だからね。ちょっと能力を持ってるだけだ。それを覗けば全く同じだよ」
「ってことは、普通に考えて、穏やかじゃねえ方法にゾロを利用しようってことだよな」
「ウソップもそう思うかい?」
「ああ」
「アルビダもなかなかの野心家だ。それに欲しいものはどうやっても手に入れたいと思うタイプだ。彼女が魔法界の在り方に興味があるとは思えないが、何らかの理由で協力しているんじゃないかな」

 黙って話を聞いていたサンジが口を挟んだ。

「お姉様は現実的な方でいらっしゃるから、ご自身にプラスにならない限りは危ないことはなさらねえ。今回関係していらっしゃるなら、それは理由というより見返りを要求されておいでだろうな」
「それがゾロだと思うのか?」
「ああ。残念なことに、お姉様はマッチョマンがお好みだ。布越しでも妥協できる程度にはな。ただ……」

 フーッと長い煙を吐いた。

「それをこのタイミングで行動に移したということは、恐らく布越し以上のことを見返りとして受け取られるってことなんだろうな」
「……ゾロをよからぬことに利用して、お払い箱になったらくれてやるってことか?」
「多分な。使い切って、それこそ抜け殻になっちまえば、お手で直接触れられるってな」
「抜け殻?」
「毬藻が消えて、髑髏だけ残った場合だな。まあ300年も生きれば大往生だろ」
「サンジ!!」

 ウソップは本気で怒鳴った。

「たとえ本気じゃなかったとしても、どんな場合であっても、言っていいことと悪いことがある!」

 一瞬、泣くかと思うような表情をしたように見えたが、直ぐにそっぽを向いて、長い前髪で表情を隠した。

「てめえを怒らせるつもりじゃなかったんだ。わりぃ」
「いいか。今俺達はゾロを助けるために集まってるんだ。それを絶対忘れんじゃねえ!」
「そうだよ、サンちゃん。大体、ゾロがそう簡単に消されるわけないだろう?」
「ああ、しぶてえからなあ」

 ようやくサンジが2人を見ると、そこには心配と励ましと決意を滲ませた目でサンジを見ていてくれた。

「あいつは簡単に消されたりしねえ。代表者クラスも歯が立たねえよ」
「どういうことだい?」
「多分本当の力を知らねえから」
「本当の力って、結界を張るくらいしかできないんじゃないのかい?」
「自分の身を守ることしかできないと思ってるだろ?」
「違うのかい?」

 実体がなく、物質に触ることができないゾロは、念で掛けられるものしか術は使えない。罰せられたときにその類い希な能力を剥奪されているから、できることはせいぜい結界を張るくらいだ。ただ、元々力のある魔法使いだったから、普通より強いものが張れても納得できる。実際、そう認識されている。

「それは、ゾロがそれしかやってないからだ」

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