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The wizard(22) [10.04.08.〜]


「さあ、食え!」

 そう言って大皿を両手と頭上に載せて持ってきた。
 エースに大半を食べられたとはいえ、サンジもウソップも満足なほど食べた。
 そして、つい先日と同じように、テーブルに食後のコーヒーが並べられた。

「じゃあ分かったことを話してもらおうか」

 サンジは、煙草に火をつけながら聞いた。
 どこから話そうかなあと呟いて、エースは少し思案した。

「帰ってから直ぐに評議会の代表者会に報告に行ったんだ。そうしたら『そのまま警察に任せておけば大丈夫だろう』って言うんだ。おかしいだろう? 普段あれだけゾロを警戒しておきながら、所在不明のまま放っておけなんて不自然過ぎる」
「俺達に期待してくれるのはいいが、代表者会ってなんだ?」
「評議会全体で話し合うまでいかないものを決めたりする、評議会の中のリーダー会ってところかな。いつものように、まず代表者会のメンバーである俺の直属の上司に報告したんだ。メンバーの権限はかなり強くてね。個人に決定権がある。でも、個人で対処できないようなデカい問題になると、代表者が集まって審議にかけるんだ。今回の件は絶対、秘密裏だったとしても、召集がかかる問題なはずなのに、それをしなかった」
「そいつが毬藻を盗んだってのは安易だよな。でも、何か知ってるな」
「恐らくね。だから張ってたんだ。そうしたら、何人かとこっそり会いだしたんだけど」

 エースはサンジを見た。

「その中にアルビダがいたよ」

 サンジは目を見開いた。

「誰だ?」

 固まったままのサンジに視線をやったまま、エースが答えた。

「質も敷居も高い会員制高級クラブがあるだろう? あそこのオーナーだ」
「魔法使いなのか?」
「毬藻に気がある吸血鬼のレディだ」

 我に返ったサンジは、ゆっくりと煙草の煙を吐いた。

「……女に対して不本意そうだな、珍しく」
「だってよ、触れもしねえ亡霊だぞ。どれだけ名を馳せた剣士で凄腕魔法使いか知らねえが、今はただの筋肉寝腐れ芝生腹巻きだぞ。何故俺じゃねえんだ。俺ならその身もお心も満たして差し上げるのにー!!」
「いや、無理だろ」
「あ? 俺よりあの緑マッチョの方がモテるとでも? 鼻のくせに何言ってやがる」
「そうは言わねえけど、鼻いうな!」

 女と見れば美辞麗句で持て囃すサンジだが、実際には手を取る程度で、その甲へのキスも唇は触れていないことをウソップは知っている。
 そんな男が、身も心もなんて笑わせる。触れも出来ない亡霊に、それこそ身も心も捧げているのはお前じゃないのかと言いたくなる。
……言わないけどな。言ったら最後だ、恐ろしい。

「それなら俺が一番だろうけどね♪ まあアルビダのタイプは置いておいて」

 エースは話を続けた。

「ギンの件といい、彼女が関係していると思わないか?」
「ギン?」

 またウソップの知らない名前だ。いちいち説明させるのは悪いなあと思いつつ、しっかり把握しておかないことには、後々困るのはごめんだ。

「ああ、ごめん。今回サンちゃんが独房に入れられることになった元凶であり被害者」
「あの焼死体の魔法陣を張った悪魔だよ。あの事件にアルビダお姉様が一枚かんでたわけだ」
「あれか。じゃあその彼女がゾロに惚れて盗んだのか? それだけなら、事件との関係は薄いんじゃないか? 単純に盗めば済む話だ」
「触れないのに盗んでどうするんだろうねぇ。鑑賞するったって、出て来てくれなきゃね」
「髑髏に触れりゃ満足とか」
「触れないよ」
「霊体には触れなくても髑髏なら触れるだろ?」
「ゾロは希有でね。霊体でありながら結界は張れる。誰にも触らせないように自分で結界を張ってるんだ。だから、今回はその結界ごと魔方陣の布で封じて持ち去ったんだ。布越しには触れても、直接髑髏には触らせてもらえないだろうね」
「でも、サンジは触ってるよな? 俺、見たことあるぜ」
「サンちゃんは特別なんだよ。本当に特別。何でだろうね」

 2人してサンジに目をやる。

「へ?」

 思わず間の抜けた返事をしてしまった。
 
「サンちゃん、何でゾロはサンちゃんには触らせるの?」
「知るかよ。もう習慣になっちまってるんじゃねえか?」
「そもそもいつから一緒にいるんだ? 昨夜捜査しながら思ったんだ。俺は、サンジとゾロのこと、何にも知らねえんだなって」

 ウソップの声は、ちょっと寂しげでちょっと拗ねた感じがした。サンジは、それを素直に嬉しいと思える自分がちょっとくすぐったかった。

「ウソップ、聞きたいことは聞いてくれ。お前なら大丈夫だと思うからよ。大抵の事は話せると思う」
「サンちゃん、俺は?」
「アホな質問は受け付けねえ」
「えー、いつだって本気なのにー」
「何を聞いてるんだ?」
「俺と付き合ってくれない理由とか」
「くだらねえな」

 思わずウソップは好奇心を刺激されたことを後悔したくらいだった。

「で?」
「あ?」
「ゾロとはいつからの付き合いだ?」

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