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The wizard(21) [10.04.08.〜]


「サンジ!」
「サンジ君、泥棒ですって?」
「ナミさんが来てくださったなんて、泥棒に感謝だねー♪」
「バカ言ってるんじゃないわよ。そんな真っ青な顔してるくせに。で、盗まれたものは?」
「髑髏だよ、ナミちゃん」
「はあ!? ……って、エース?」
「久しぶりだね」
「本当に」
「ナミさん、エースを知ってるの?」
「ええ。でも、取りあえずその話は後よ。髑髏ですって?」
「ああ」
「オカルトマニアかしら。何でそんなもの」

 ナミは気味悪いと言わんばかりに眉間に皺を寄せた。
 その表情を見て、サンジは苦笑した。

「本当に悪趣味だよね。古い骸骨なんてさ」

 ナミは、そこに何とも言い難い雰囲気を感じとった。

「そんなこと言いながら、余程大事なものなのね」
「ナミさんのハートとは比べられないけどね」

 口調は軽いが、その視線はあるべき場所を見つめたままだ。

「……他は全てなくしても構わねえのに」

 思わず漏れた小さな呟きが聞こえてしまったエースとウソップは、視線を合わせた。
 とにかく捜さなければと、ウソップは自分を叱咤した。「ナミ、髑髏があったのはここだ。俺がランチを食べて店を出るまではここにあった。髑髏っていっても普通の髑髏じゃねえよ。呪術的な装飾がされている独特なものだ。まあ見事だぜ」
「骨董屋と美術品関係の店をチェックしないといけないわね。ウソップはここをお願い。私はそっちの捜査に当たるわ」
「分かった」
「サンジ君、写真か何かある?」
「さすがに写真はないなあ。でも、そこの本に書いてあるのと同じ文字が使われてるよ」
「ああ、これね。写真とってもいい?」

 サンジはエースを見た。軽く頷いたのを了承と取った。

「いいよ」
「ありがとう。じゃあウソップ、よろしくね」
「おう。そっちこそよろしく頼むな」
「あ、ナミさん。多分布にくるまれてると思う。その文字の書かれた布に」
「分かったわ。見つけられたら、ご馳走してね」

 ナミは部下達に指示を出し、店を出て行った。
 店内ではウソップが証拠採取の陣頭指揮を取った。
 それが終わり、撤収する際、ウソップがサンジの所へ来た。

「全力で捜すからな」
「ああ、頼む」

 ポンと肩を叩き、ウソップは署に向かった。
「さて」

 エースが立ち上がった。

「俺は魔法界の方をちょっと探ってくるよ」
「エース」
「大丈夫。ヤバい真似はしないよ」

 身辺に気をつけるよう言い残して、エースも店を出ていった。
 一人になり、サンジはさっきから気になっていたことを思い返してみる。
 ゾロと、キスをした。
 普通に考えれば、俺がキスをしたからゾロもしただけなんだろう。
 いつだってそうだ。俺がしたことしかしない。許しを得た事しかしないガキかと、ずっと思っていた。
 でも、今なら思う。ひょっとしたら、ゾロは怖かったのかもしれない。
 相手の行動を繰り返すだけなら、少なくとも狂気に陥るほどに傷つけることはない。
 そうすることを怖がるくらいには俺を想ってくれているんだろう。ゾロからの愛情は感じているが、それがどんな類のものか判らずにいた。でも、キスを返してくれたから、少しくらい自惚れてもいいと思う。……思い返すだけで泣きそうだ。
 それを堪えて、努めて冷静に考えてみる。
 これまでだって、何度か髑髏にキスをしたことがある。全く気付いてないことはないと思う。
 だからこそ、何故今朝はキスしてきたのかが気になってしまう。
 これまでしてこなかったキス。
 あいつは何を考えている?
 こうなることが分かっていたんじゃないか?
 何か知っているんじゃないか?
 それは、いつ知ったんだ?

 思い返せ。きっと何かあるはずだ。


* * * * *



 翌日、臨時休業の店に、ウソップが冴えない表情で現れた。さすがのサンジも苦笑いだ。

「何て顔してやがる」
「だってよぉ」
「1日でそんな疲れたかい?」

 先に来ていたエースが、自分の向かいに座るよう促した。

「知り合いの安否を捜査するのは初めてなんだ」
「簡単には死ねないから、無事だよ。まあその辺も含めて、結構ハードな話になるからね。先ずは腹ごしらえして、それからだ。サンちゃんもね」
「うし。じゃあスタミナランチでも作ろうじゃねえか」

 そういうと、サンジは腕捲りをしながらキッチンへ向かった。
 その後ろ姿を見届けてから、エースはウソップに言った。

「ゾロの捜索の手掛かりになる部分は勿論話すよ。ただ、それ以外は魔法界の内部事情が関わってる。聞くかどうかは、ウソップに任せる」
「それがハードな話か?」
「まあね」
「余計な事には首を突っ込んじゃいけない病なんだけどな。ここまで来て引き下がれるかよ」
「いいね、その心意気♪ その辺りをゾロは一番気に入ってたのかもしれないなあ」

 エースは本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。

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