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The wizard(5) [10.04.08.〜]


「でも、どこから何を話せばいいのか……」
「それなら、俺の質問に答えてもらう形で進めていいかい?」
「はい。隠したりはしません。分かることは全てお話しします」

 そう言ったビビの瞳は、また強い光を湛えていた。


* * * * *



 コーザはスラムのチンピラだった。身寄りもなく、物心ついた時から生きる為に何でもやった。
 だから、悪魔と契約することに躊躇はなかった。
 悪魔はまず2種類に大別される。この世に存在を許されたものと、そうでないもの。許されたものは、評議会と『契約』を結ぶ。糧を得る為の『狩り』をしないというものだ。そうしてこの世に居座る悪魔たちは、人間の肉体や魂そのものではなく、悪意や悪行というもののエネルギーを糧として生きる。そのため、それらを多分に持ち合わせた人間と契約し、『鎖』を繋ぐ。そうすることで、『鎖』を通して糧を得る。
 コーザは、その契約を結んでいた。だからといってその身に何か起こる訳でもなく、これまで通りの生活をしていれば、勝手に悪魔に感謝されるだけなので、気にもしていなかった。
 しかし、ビビと出会い、コーザは変わろうとした。
 良心の痛みを知り、悪行は激減していった。生きる糧を減らしたくない悪魔は、彼に悪意をそそのかした。ビビと悪魔の板挟みに業を煮やしたコーザは、行動に出た。


* * * * *



「『鎖』を壊す、か」
「はい」
「そんな危険を冒さなくても、奴らにとって用なしになれは向こうの方から『鎖』を切ってくれるんだよ。悪いことしなきゃいいだけだってことは、契約を結ぶ際に聞いてるはずなんだけど」
「はい、分かっています。だから待とうって、頑張ろうって言ったんです。でも、私と結婚前にケリをつけたいって聞かなくて」

 吐き捨てるような溜め息が聞こえた。

「アホ剣士、何も言うな喋るな、オロスぞ」

 先手を取られ、ちっと舌打ちをした。

「こっちの男との関係は?」
「分かりません。でも、何かこれ位の筒のような物を渡していたそうです」

 そういって、両手で30センチ位の長さを示した。
 横を向いてタバコの煙を吐き、ゾロを見た。

「多分『鎖』を入れてあるな」
「ああ」

 もう一度煙を吐くと、ビビに向き合い、聞いた。

「ビビちゃん、『鎖』の壊し方、知ってる?」
「はい」
「誰に聞いたの?」
「……コーザから」

 一瞬よぎったものを、二人が見逃すはずもない。

「本当に?」
「はい」
「そいつが誰から聞いたか知ってるな」

 だから動揺したんだろうとゾロは言い、ビビは明らかに反応した。

「ビビちゃん、『鎖』を具現化することも、悪魔から『鎖』を切り離すこともそう簡単じゃない。誰から聞いたのかによって、どの方法を取ったかが分かるし、それが分かれば、コーザに近づける。時間の問題もあるよ。出来るだけ早くコーザを見つけないと、奴らに先を越されたら大変だ。だから、コーザに方法を教えたのは誰か、教えてくれないかい?」

 揺れる瞳がゾロを映し、目を閉じる。ゆっくりと開かれた時には、もうその揺らぎはなく、真っ直ぐにサンジを見た。

「会員制クラブのオーナーだそうです。コーザは会員ではなかったんですが、会員の方に連れて行かれたことがあって、知り合ったと聞いています。クラブの名前や場所は教えてもらってないので、それ以上のことは……」 ゾロの眉間に皺が刻まれる。
 サンジの巻いた眉が情けなく下がる。

「ひょっとして、アルビダお姉様かな〜」
「ひょっとしなくてもあの女だろうな」
「ご存知ですか?」
「うん。そっかあ」

 ハア〜と大きな溜め息を付きながらがっくりと肩を落とした。

「あの……危険な方なんですか?」
「いいや、性根は心優しい素敵なレディだよ。そういう意味では、2人のことを思って協力してくれたんだと思う。うん」
「何が。あの自己中心的傲慢女が、そんなことだけで動くか」
「ああ!?」
「いっつも面倒押し付けられてるじゃねえか」
「頼って下さってるんだろうが! 麗しのレディが辛い思いをなさっているのを放っておけるか! あのお美しい瞳が涙に揺らめいているのを見たら……」
「今時そんな手に引っ掛かるのはテメエくらいだろ」
「ああ!?お姉様の熱〜い視線に満更でもねえ顔してんのは誰だ、むっつりエロ毬藻」
「誰がだ! 鬱陶しくてムカつくだけだ! テメエと一緒にするな、女好きのアホエロ眉毛が」
「男に生まれてレディをお慕いせずに何が楽しい! レディこそこの世の至宝だ!」
「あの……」
「「あ」」

 今日初めて会ったというのに、既に何度か目にする光景。呆れつつ、深刻さで凝り固まった心に冷静さが戻ってくるのを感じた。

「私は『鎖』を壊す方法は聞きましたが、『鎖』をどうやって手に入れるのかは知りません。先ほどの物が『鎖』だとすると、コーザはもうそれを手に入れわけですよね。そうすると、コーザは今どこにいるんでしょう。そのアルビダさんに教えて頂いた方法は、危険なのでしょうか?」

 一気に話すビビに、二人は面食らった。が、これが本来の彼女の姿だろうと確信した。


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