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The wizard(3) [10.04.08.〜]


 そして、サンジの前に緑の髪の男が現れた。

「これだけ焼かれちまってるけど、分かるか?」

 ウソップがゾロを見ながら話す。
 ゾロはサンジに重なるように立っている。2人の身長はほぼ同じなので、カメラにはサンジに話し掛けているようにしか映っていない。不自然にならないようにという配慮だ。

「問題ねえ」
「おい、テメエはその模様に記憶はねえか?」
「これか。そう珍しくもねえ。普通の装飾の文様だな。一昔前に流行ったやつだ」
「10年前、20年前とかか。こんなの流行ったか?」
「毬藻を同じ時間軸で考えんなよ。一桁違えよ」
「100年前かい」
「一つ手掛かりが見つかったな」
「だな。じゃあゾロ。頼む」

 片眉を上げて応じると、ゾロは左手で遺体に触れた。すると、褐色の手が白い肌に変わっていくのを皮切りに、全く別人へと変貌した。

「見覚えあるぞ。前科持ちだな」

 ウソップの呟きから、もう十分だと判断したのか、ゾロは遺体から手を放し、本来の姿に戻った。

「これでいいか?」
「いや、十分だ。ゾロ、サンキューな」
「おう。じゃあ俺は寝るぞ」 後半はサンジに向かって言い、バッグに吸い込まれるように消えた。

「ったく、寝腐れ毬藻が。さ〜て、俺も帰るか」
「本当サンキューな。助かったぜ。今車回してくるからよ」
「いや、ちょっと歩きたいから構わねえよ」
「そうか? 悪いな。外まで送るよ」
「おう。ギャラ、忘れんなよ」

 建物の外で分かれると、サンジは帰路とは別の道を歩き始めた。


* * * * *



 魔法使いは皆評議会の管理下にある。サンジも例外ではなく、それどころかかなり目を付けられている存在だ。その評議会の議員でサンジの管理官であるエースに会う為に、サンジは博物館を訪れた。

「サンちゃんから来てくれるなんて珍しいね。ゾロを連れてるなんて、もっと珍しい」

 普段は学芸員として働いているエースは、人懐っこい笑顔で皆から好かれ、頼られている評議員だ。だが、サンジは笑顔の目の奥が笑っていないことを知っている。

「緑ハゲは絶賛昼寝中だ。エースにちょっと聞きてえ事があってな。最近『協定』を破った奴はいるのか?」
「何でそんな事を聞くんだい?」「『狩り』の痕跡を見たんだよ」
「ふうん……」

 エースはデスクチェアに深く腰掛け、腕を組み直して上を見上げた。

「場所はどこだい?」
「ダウンタウンの建築現場だ。結界も張ってあった」
「結界ねえ……」

 思案顔でまだ上を見上げたまま、椅子をゆっくり回転させた。3周ほど回ると、サンジの方を向く形で止まった。

「上に話してみるか。必要だったら報告するよ」

 目の笑っていないいつもの笑顔でそう言うと、立ち上がってドアを開けた。

「必要かどうかはどうでもいいから報告しろよ。気になるだろ」

 そう言いながら部屋から出ていこうとして、ちょうどエースの前に差し掛かる。

「あー、久しぶりにサンちゃんの飯が食いたいな」
「毎度あり〜」
「店に食いに行かなきゃ駄目?」
「デリバリーはしてねえよ」
「商売抜きで、俺のためだけのサンちゃんの料理、食わせてほしいなあ」
「冗談は顔だけにしとけ」
「相変わらずつれないね」

 そっとサンジの肩に腕を回そうとしたが、触れるか触れないかのところで見えない何かに弾かれた。

「昼寝してるんじゃなかったのか」
「何だ?」
「いいや、別に。ガードが固いね」
「あ?」
「出て左に少し行った所に、新しい店ができたんだ。ハンバーガーのソースが美味いよ」
「へえ。寄ってみるか。じゃあな」


* * * * *



 博物館から出て、教えられた店へ向かう。
 天気がいいので窓は開け放たれ、オープンカフェのようになっていた店をさっと一瞥すると、サンジは少し離れた人通りのない路地へ入った。

「おい、起きやがれ」
「何だ」
「すぐそこの新しい店に行きてえんだよ」
「行きゃいいじゃねえか」
「ちょっといろいろ食べてみてえが、ランチ時に一人でデカいテーブル占拠するわけにもいかねえだろ? 窓は開け放たれてるし、ここから店までもガラスや鏡の類はねえから、、テメエ付き合え。たまには俺の役に立ちやがれ」

 バッグをスティックで叩きながら早口で言い放つ顔は、ほんのり赤い。
 小さなため息が聞こえた気がして振り向くと、そこにはゾロが姿を現していた。


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