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The wizard(2) [10.04.08.〜]


* * * * *



「こいつはまた見事なこった」

 現場に到着したサンジは、魔法陣を見て言った。

「魔物でもこの世に呼び寄せたのかしら?」
「ナミすわ〜ん!! 相変わらずお美しい! ああ、貴女にお会いできるなんて、それだけでもう幸せで胸がいっぱいだ〜♪」
「それじゃあ今回もよろしくね。私のために、ボランティアで」
「ナミさんのお役にたてるなら喜んで!」
「文句つけてたじゃねえか」
「鼻、何か言ったか?」
「いーや、別に。っつうか、鼻って呼ぶな!!」

 ナミは、ウソップとコンビを組む刑事だ。なかなかのやり手だが、かなりのリアリストで、ロマンチストのウソップとは対照的だ。勿論、魔法だの亡霊だの、欠片も信じてはいない。
 だが、サンジの「鑑識力」と知識には一目おいている。この手の事件は、そのアドバイスを基にして容疑者までこぎ着けてきた。そこから立証できずに結局未解決になっていることが、ナミには悔しくてたまらない。

「サンジ君、どう?」
「呼び寄せたといえば呼び寄せたんだけど、魔物を呼び寄せたわけじゃないよ。魔物が獲物を呼び寄せたんだ。これは、言うなれば『罠』だよ」
「罠?」
「うん。ここに目当ての人間を呼び寄せたんだ」
「そんなことできるのかよ?」
「簡単じゃないけどな」
「じゃあ、これは被害者を狙って書かれたもので、計画的犯行で間違いないのね」
「ああ、ナミさん! 僕の能力をやっとお認め下さったんだね〜!!」

 サンジは、目をハートにしながら体をくねらせた。そのクネクネとした何とも言えない体の動きがいっそ魔法かと、ナミとウソップは思っていたりする。

「これの効力なんて信じるわけないでしょ。殺しの意図があったかどうかって点よ。あったのよね?」
「うーん、残念ながら、これだけじゃ何とも。蜘蛛の巣に掛かっただけじゃ死なないだろう?」
「遺体を見たら分かる?」
「それも何とも言えないよ」
「そんな情報じゃ、やっぱりボランティアね。報酬は払えないわ」
「最初から払う気ないじゃねえか」
「何? ウソップ」
「何でもありませ〜ん!あれ、遺体の方は一緒に行かねえのか?」
「何度も見たいものじゃないわよ。何か分かったら教えて」

 もう興味はないというふうに、きびすを返した。

「え〜、ナミさん、一緒じゃないの?」
「何か見つけてくれたらまた会えるわよ。じゃあ頑張ってね、サンジ君」
「つれない貴女も魅力的だ〜♪ お気をつけて〜!」

 ハートを撒き散らしながら、その姿が見えなくなるまで手を振った。

「オラ、次行くぞ。さっさと連れて行け」
「その男女差別、何とかならねえのか?」
「ああ!? ヤローがレディと同列に並べるなんて、天と地がひっくり返っても有り得ねえ」
「……そうだろうな。このまま直接向かっていいのか? 一度家に寄るか?」
「いや、取り立てて必要な物はなさそうだし、いいぜ」
「ゾロは?」
「いるぜ。これに入ってる」

 そう言って、手にしているホッケーのスティックで肩に掛けたザックを軽く叩いた。

「あ、荷物チェック、あるのか?」
「普通ならな。今日は俺と一緒だから大丈夫だ」
「じゃあ心配ねえな」
「いざとなったら、魔法で見えなくさせりゃいいじゃねえか」
「そんなことは絶対しねえ」
「……乗れよ。署に向かうぞ」

 絶対しないと言い切った時の真剣な様子に、その理由を尋ねるのが憚られた。
 単に見えなくさせる魔法なら、ウソップも目の前でやってもらったことがある。だから、その魔法自体に問題があるわけではないだろう。ゾロだからなのだろうか。
 親しくなっても、なんとなく尋ねられないでいる、ゾロの詳細。いつか話してもらえるのだろうか。それはサンジの口からなのか、それともゾロ自身からなのか。
 そんなことを思っているうちに、車は到着した。


* * * * *



 遺体は、見事なまでに黒こげだった。

「やっぱりまだ身元どころか性別確認中だと。骨まで焼けてるって、おかしいだろ?」
「俺を呼びたくなるわけだ」

 サンジは遺体に歩み寄り、ゆっくりと全身を眺め、そして右の掌に目を留めた。これだけ焼けたというのに、はっきりと跡が確認できる。

「これは刻印じゃなさそうだな」
「そうなのか? じゃあその柄は意味なしか」
「それ自体には意味はねえだろうが、こんな風に跡が残ったってことに、何かありそうだな」

 サンジは遺体の周囲をゆっくり歩きながら、注意深く観察する振りをし、監視カメラの位置を確認する。左肩に掛けたザックを前に抱え、ちょうどカメラに背を向ける位置に立つ。

「じゃあ、始めるか」

 遺体を挟んで、サンジの真向かいにウソップが立つ。

「オラ、出番だぜ」

 バッグを支える手の右の人差し指が、乱暴な言い方にそぐわずそっとバッグの表面を撫でる。
 その仕草にウソップは何かを感じたが、それも一瞬のことだった。


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