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The wizard(69) [10.04.08.〜]


「ということで、こっそりやってるんでな、回復に時間がかかってる。まあ、殺しても死なねえ奴だから、なんとかなるだろうよ。もう少し待っててくれ」
「あんた、何者なんだ? なんでこんなことをする? なんでこんなことができる?」

 なかなかどころかほとんど答えをくれない男に、それでも聞かずにいられなかった。

「坊主の焦燥感は、誰よりも分かっちまうんでな。触れられないってのは、なかなかキツイもんだ」
「あんたも亡霊だったのか?」
「いや。次に会った時にでも教えてやるよ。だから、面倒なことになる前に、今はもう帰れ。できることもできなくなっちまう」

 それじゃあなと酒を持った手を挙げて、踵を返した。扉が閉められると、再び静寂が戻り、そこには生き物の気配が全くない廃墟のようになった。
 サンジとウソップは、黙ったまま扉を見つめていた。


* * * * *



 どれくらいそうしていただろうか。先に口を開いたのは、ウソップだった。

「なあ。さっきの、本物のゾロだったよな?」
「ああ」
「包帯でぐるぐる巻きってことは、普通の肉体ってことだよな?」
「恐らくな」
「ゾロの死体に本人の亡霊が取り付いていたんだろ?」
「……違え」
「え? でも、お前の叔父さんとあの吸血鬼女の話では、そんな感じだったぞ」
「みんなそう思ってるだけだ。どうやったかはしらねえが、あれは本物の生きた人間だ。死臭もしねえし、心臓も動いてたし、体温もあった。ちゃんと痛覚もありやがったぞ」
「でも、その髑髏は?」

 サンジのザックを指差した。聞いたわけではないが、当然中に入れてきているだろうと思っていた。そして、それは間違いなかったようだ。
 サンジは口調とは裏腹な優しい手付きでザックを撫でた。

「これはどうしても必要だから、挿げ替えられたんだってよ。頭の中には、こいつの代わりに水晶の髑髏が入ってるらしいぜ」
「水晶の髑髏……。あ、ひょっとして、さっきの男、そこにも関わっているんじゃねえか?」
「そこってどこだよ」
「ゾロが生き返ったことだよ。悪魔との契約で生き返ったわけじゃねえし、もちろん魔法も違うんだろ? で、そういうことに天は関わらねえんだろ? そうしたら、いろいろ知ってるみてえな胡散臭えあのおっさんが関係してそうじゃねえか」
「鷹の目のダチで、理事長の知り合いっつったな」

 確かに、肉体は別にして、その中身が普通とは到底考えられない。

「そっちを探ってみるか」
「おう。取り合えずゾロの居場所は分かったし、まあ危険もないようだしな」
「そこはあのオッサンを信じるしかねえのが癪だな」
「そういうなよ。悪い奴じゃなさそうだったぜ」
「ウソップがそういうなら、そうなんだろうよ」
「お、珍しく素直じゃねえか」
「いつだって素直だっつーの。よし、鼻、帰って作戦の練り直しだ」
「鼻って言うな! それに作戦なんてあったのかよ」
「うるせえな、細かいことはいいんだよ」
「いや、それ、細かいことかよ」

 ここへ来る時よりも、足も口調も軽くなっていることにはお互い触れず、来た道を戻っていった。


* * * * *



 帰宅した2人は、サンジの店の奥の部屋にいた。

「うーん、分かんねえ」

 ウソップは、古めかしい本の前で突っ伏した。

「やっぱり古典にヒントなんてねえのかなあ」
「鷹の目の絵本だって半ば史実だから、同じように何かしらの情報が紛れてるに違いないっつったのは自分だろうが」
「そうだけどよー」

 グダグダとするウソップの声に、サンジも本から目を離した。

「まあ、少し休憩するか。コーヒー? 紅茶?」
「あー、ちょっと甘いもんがいいな」
「レモネードにするか」
「ありがてえ」

 サンジが部屋を出て行った後、ウソップは伸びをして、そのままぐるっと部屋を見渡した。そして、サンジが読んでいた本を覗き込む。そこには見慣れない文字が書かれ、 挿絵も何とも言い難い雰囲気を醸し出していた。
 ボーっと目の前にある髑髏を見ていると、サンジが戻ってきた。

「ほらよ」
「サンキュー」

 程よい甘さと酸味で、疲れた頭がすっきりとする。

「あー、染み渡るなあ。しかし、よく読めるな、こんな文字」
「ガキの頃から自然に覚えたもんだからな。まあ、さすがにこれより古いものになると、ちょっとキツくなるぜ」
「魔法の世界にも一応古典とかあるのか」
「そりゃあな。言ったろ、魔法使いっていう職業的な能力なだけで、普通の人間だって」
「そうはいうけどよ」「俺からすりゃあ、ウソップの刑事としての能力の方が普通じゃねえよ」
「お」
「まあ、魔法の能力は天才的な俺様が基準になってるから、ウソップが魔法使いを普通と思えねえのは仕方ねえことだと思うぜ」
「……」
「なんだよ」
「いや、別に」

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