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The wizard(67) [10.04.08.〜]


* * * * *



「おー! 昔話のままみてえな屋敷。間違いないな」

 周りを深い森に取り囲まれた、日当たりの悪そうな陰湿な空気の漂う朽ちかけた古い屋敷。
 ボロボロの石畳をスタスタと歩くサンジの後ろを、躓きながらウソップが続く。

「なんかいそうだな」
「そりゃいるだろ。鷹の目の館だぜ。誰もが憧れる吸血鬼の大剣豪だぜ。悪魔も憧れて当然だろう」
「ええっ!? やっぱり魔物がいるのか?」
「いねえよ」
「いねえのかよ」
「アルビダお姉様もやっとのことで探し出したような館だ。そうそう知られちゃいねえだろうよ。そんな館をあれだけの情報量で探し出した俺様は、やはり天才だな」
「……その情報を基に場所を割り出したのは俺だと思うんだけどよ」
「まあ、鼻もさすがだ」
「鼻って言うなっ!」
「いや、真面目にすげえと思ってるぜ」
「最初から素直にそう言えよ」
「その逃げ腰の体勢を見ると、素直に褒めたくなくなるんだよ」
「だだだだって、すっげーこえー雰囲気が漂っててよ、近寄ったらいけない病がよお」
「誰もいねえよ」
「いないならいないでこえーんだよ。まかり間違って何か聞こえでもしたら……」

 コツ、コツという音がしたような気がして、サンジは立ち止まった。

「ど、どうした?」
「いや……」

 気のせいかと思ったところに、今度はもっとはっきりと聞こえてきた。

「サ、サンジ」
「ああ」
「足音、だよな」
「多分な」

 だんだん近付いてくる足音は、屋敷の中から聞こえてくる。重厚な扉がギギギ……と重い音を立てながらゆっくりと開く。
 サンジはウソップを背に庇い、スティックを構えた。

「お、いらっしゃい」

 屋敷から出てきたのは、この場に不似合いなほど陽気な雰囲気を纏った男だった。

「てめえ、誰だ?」
「普通訪れた方が名乗るもんじゃないか?」
「相手が屋敷の主ならな」
「今は俺が主人みたいなもんなんだけどな」
「ああ?」
「管理人ってところかな。聞いてない?」
「誰にだよ」
「へえ、自力で来たのか。関心、関心」
「質問に答えろってんだ!!」

 飄々とした受け答えに、じれったくなったサンジが怒鳴った。それとは対照的に、ウソップは落ち着いた様子でサンジを宥めた。

「サンジ、落ち着けって。この人、普通の人間だろ?」
「お、よく分かったね」
「経験値が上がったもんで、見分けはつくようになっちまったよ」
「さすが敏腕刑事さんだ」

 ウソップはぎょっとして、サンジを見た。

「大体この場所に普通の人間がいること自体がおかしいだろうが。その時点で普通はねえ」

 サンジの睨んだ視線などものともせずに、片手に持っていた酒の瓶に口を付けた。

「普通の人間だよ。魔力も持っていなけりゃ魔法も使えねえ。ここはうるせえのが寄り付かないから、管理を条件に居候させてもらってる。匿ってもらってるのかもしれねえけどな。それで納得しねえか?」
「するかよ」
「お前がしなくても、評議会は了承していることだから、戻って聞いてみろ。あー、下っ端に聞いても駄目だぞ。理事長に聞けよ」
「会えねえ」

 ムッとして答えてしまった。理事会など、評議会委員ですら会えるか微妙なくらい雲の上の存在だ。

「中途半端だなあ。どうせ問題児になるなら、理事会が出張ってくるくらいになれよ」
「いや、そのアドバイスはどうよ」

 思わずウソップが突っ込んだ。

「まあ、百歩譲って居候だと納得してやったとして。なんでここにいられる? ここは普通の屋敷じゃねえことくらい知ってんだろ?」

 魔力も魔法も、と言ったからには、魔物も魔法使いのことも知っている。おまけにサンジのことを問題児だと言った。魔法界の現状も周知だということか。ひょっとして天界のことも知っているのかもしれない。かなり怪しいと、サンジは警戒を強めた。

「坊主が育てたにしちゃ、猜疑心が強そうだな。いや、だからこそか?」
「あ?」
「いや、いい。ここは俺の友人の家だ。まあ、普通じゃねえ奴だから、そういう意味じゃこの屋敷も普通じゃねえな。趣味が悪いし」
「友人?」

 サンジとウソップの頭の中では、さらに疑問符が増えた。

「……ここは鷹の目の館じゃねえのか?」

 探るように、ウソップが尋ねた。
 それに、いたずらな笑みを浮かべて答えた。

「そう呼ばれている奴の館だな。悪いが入れてはやれねえよ」

 俺が怒られると言いつつ、質問には答えてやるという態で扉に寄りかかり、また酒を口にした。

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