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The wizard(65) [10.04.08.〜]


 ゾロは、きっと今が一番楽しいと感じていたに違いない。亡霊だけど、それを受け入れ、共に笑ってくれる友人がいる。そして、ここには俺がいる。
 自惚れていいはずだ。ゾロは俺から離れるはずがない。
 ゾロは、絶対に。

「よし! そうしたら作戦の練り直しだ」
「作戦なんてあったっけ?」
「エース〜、それは言っちゃダメだろ」

 ウソップはサンジから手を離し、苦笑しながらエースを振り返った。

「なあ、煉獄って何だ? 地獄とは別物なんだよな?」
「煉獄は神の領域だ」

 エースが答えるより先に、サンジが続けた。

「神?」
「そうだ。地獄は魔物の巣窟で、煉獄は神の焼却炉ってとこだな」

 ウソップは改めてエースに向き直る。

「煉獄って何だ?」
「鼻っ! 俺様の説明をスルーとはいい度胸じゃねえか!」
「あんなんで分かるかっ!」
「分かれよ」
「無理です」
「えー、そうかあ? すっげー分かりやすいじゃねえか」

 ルフィも応じる。

「お前が分かるのは、単にお前が煉獄を知ってるからだと思うぞ」
「何もかも焼き尽くす不思議炎でいーだろ」「いや、余計よくねえよ」
「理解力のねえ鼻だ」
「お前らの説明が絶対悪い!」

 我慢出来ずに、エースは吹き出した。

「間違っちゃいないけど、いくら何でもそれだけじゃ説明不足だよなあ」

 くくっと、笑いながらウソップをフォローした。

「世界は大きく3つに分かれてるんだ。まず俺達人間の生きる世界。それからルフィ達の生きる世界。そして、神とその使いである天使のいる世界」
「簡単に言えば、この世と地獄とあの世ってことだ」
「だから、お前の説明は大雑把過ぎるんだっての!」
「ああ!?」
「サンジはちょっと黙ってろ。今は俺がウソップに説明してるんだ」

 ちっと舌打ちした姿は、すっかりいつものチンピラ然とした風だ。

「天と他の2つの世界とは大きく違うんだ。いうなればオブザーバーか。神は傍観者で調整役ってところだな」
「傍観者っていうのはなんとなく分かるけどよ、調整役ってのは?」
「世界に必要以上に影響を与えることになると思われるのに、2つの世界では処理しきれないような事態を調整するんだ。その手段の一つが‘無に帰すこと’」
「無に帰す? 殺すってことか?」
「いや。言葉のままさ。存在そのものを綺麗さっぱり消すのさ。必要なら、人々の記憶の中までも消し去るらしい」
「らしい?」
「そこまで消された例は少ないらしいんだけど、実際のところは分からない。なにせ、記憶を消されちゃ記録を残す術がないだろ?」
「そりゃそうだ」
「人間は、死ぬと肉体は土に還り、魂は神の世界へ浄化する。形は変わるけれど、なくなるわけじゃない。でも、煉獄に送られると、肉体も魂も焼かれて、跡形もなく綺麗さっぱり無くなる。だから、もう化けて出ることは勿論生き返ることなんて絶対にできない」

 それは、暗に今回の元凶を指しての言葉だろう。

「……ってことは、一緒に行っちまったゾロも、もう焼かれちまったってことなのか?」

 沈黙がその場を覆う。

「アルビダ」

 不意にエースが共犯の吸血鬼を呼んだ。

「煉獄のことについて、クロコダイル卿や堕天使エネルから何か聞いたことはないかい?」
「さあ。私はあの方の血以外は興味がないから、どうでもいいもの。堕天使なんて、会った事もないわ」

 流石にあの闘いの威力に当てられたらしく、憔悴しきった様子で答えた。
 すると、サンジが弾かれたように部屋を走り出た。

「サンジ? おい、どこ行くんだ?」

 ウソップはエースと視線を合わせると、そのまま走って追いかけた。
 エースとルフィは、倒れ伏している魔法使い達とアルビダを魔法と魔力で拘束すると、2人の後を追った。
 サンジが向かったのは、応接間だった。
 バルコニーへ続く大きな窓の側にある白い布を掛けられたスツール。その上には、開けっ放しで無造作に置かれた鳥篭も、その下にある魔方陣の描かれた布も、屋敷に入ってきたときと同じようにそこにあった。
 そして、装飾が施された髑髏も。

「クソヤロウ……」

 側に走り寄った勢いとは正反対に、震える手でそっと髑髏を手に取り、胸に抱え込む。

「サンジ?」

 そこへ追いついてきたウソップの声に、サンジが振り向いた。

「それ、ゾロか?」
「空き家だけどな」

 これもまた、屋敷に入ってきたときと同じように交わされる会話。
 エースとルフィも部屋へやってきた。

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