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 う〜……だるい〜……。
 俺もまだまだ若えなあ。
 しかしまあ、何というか……よかった、うん。すげえよかった。
 不思議なのは、ゾロが可愛く思えたこと。あんな獣みてえな雄そのものな姿を、可愛いと思うっていうのは何なんだ?初めてのクセにとか、いろいろ言いてえことは山程あるんだけどな。
 やべえ、顔が緩む。

「もうすぐ半分くれえ溜まるぞ」

 タオルを腰に巻き、髪を拭きながらゾロが部屋へ入ってきた。

「あれ、お前、シャワー浴びたのか」
「ああ」
「せっかくお湯溜めてるのに。せっかちめ」
「これ、シーツも洗濯だろ?」
「あ?そりゃあ、風呂上がりにこの上で寝るのもな」
「分かった」
「え?」

 言うが早いか、ゾロはシーツを引っ張ると、その上に寝転んでいた俺ごと持ち上げた。
 シーツにくるまれて横抱き。

「……お前なあ」
「なんだ?」

 軽々と持ち上げやがって。おまけにふらつきもしねえとは。

「何でもねえよ。サッサと連れていけ」
「偉そうだな」
「偉いんだよ」
「へいへい」

 脱衣場で下ろされた時、思わず硬直しちまった。

「どうかしたか?」
「いや」
「どこか痛えのか?」
「痛えっつうか、まあそれは問題ねえ」
「じゃあ何だ?」

 脚を伝う感触がやべえとか、そんなこと言えるか!

「いや、本当に平気だから、とにかく風呂入る。ということで、向こう行け」
「………………」
「何だよ」
「……いや、いい」

 ガシガシと頭の後ろを掻いて視線を反らして呟くと、そのまま背を向けた。
 ほっとしたのとほぼ同時に気付く。
 ああ、そうか。

「ゾロ」

 振り向かずに、ただ立ち止まった。

「こっち向かずに聞け。まあ、何だ、いろいろ、えーと、ちょっとやらなきゃならねえ事があるんだよ。体は別に何ともねえが、ちゃんとしておかねえと後でヤベえ」
「あー……そうか」

 広くて綺麗な背中から不安と強張りが消えた。あれが可愛いなんて、恋は盲目とはよく言うぜ。

「手伝うぞ」
「遠慮します」
「俺が出し「絶対いらねえ!」

 う。ああああ、怒鳴ると余計にぃぃぃ〜。

「……」
「覗くな、入るな。じゃねえと、二度目はねえ」

 あからさまな不満顔するんじゃねえよ。

「返事!!」
「ちっ」
「次はねえな」
「それは嫌だ」
「じゃあ覗くな」
「………………分かった」
「その間は気に入らねえが、まあいい。いい子に待ってろよ」

 へいへいとか言いながら出て行った。さっさと終わらせて、甘やかしてやるかなあ。
 ……さっさと、終わらせられるのか?ヤッちまうよりも妙な不安……。かといって、手間取ってたら、毬藻が来そうだしな。うん。頑張れ、俺。





 妙に気恥ずかしいのを押し隠してリビングへ向かうと、ゾロはビールを飲みながらテレビを観ていた。
 そのビールを奪って飲み干し、テレビも消して、2人で寝室に戻った。
 シーツを敷きなおした布団に入ると、ゾロは俺を抱え込むように抱き締めながら、あっという間に寝ちまった。



 好きだと言われてから、まだ数時間しかたってねえのに、もうずっと前からこうしている気がする。一方で、好きだと言われたことも抱かれたことも、夢の中の話のようで。
 綺麗な夢の世界でだけの話にはしたくねえ。汚く傷付けられる現実の中でも、俺はお前に好きだと言われ続けてえなんて、さすがにちょっと寒いよなあ。29の男が、18の男に、だ。あ〜あ。


 考えるのは、今日は勘弁させてもらおう。
 何せ今日は、特別な日なんだから。



end.













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