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baby powder [11.08.29.]


 月の綺麗な夜。
 剣士の膝の上には、酔っ払っていろいろ3割増しの料理人が向かい合わせに座っている。
 料理人は随分と機嫌よく、コロコロとよく笑い、悪戯に遊ぶ剣士の手も本気で払う気はないようで、スケベだエロオヤジだと悪態はつくものの好きにさせている。
 その上、マリモやら芝生やらからかいながら、愛しそうにその短髪に指を絡め、ハゲだのでこっぱちだの言いながら、大切そうにそこに口付けを繰り返したりしている。

 こうして2人でいちゃついているのは、実は結構久しぶりだった。
 嵐に見まわれたり、海軍から逃げたり、海王類に追われたり。
 また、夏の海域が長く、日中に室内で過ごしたり休んだりしては夜更かしするという日々は、今尚続いている。 生活が昼夜逆転なら、コッチの時間も逆転させりゃいいだけとの剣士の思惑は、文字通り一蹴された。
 何せ暑い。ただでさえ暑くてぐったりするのに、体温の高い男に張り付かれ、更に体温を上げることをするなど、殺す気かオラ、とまあ、すげなくガラ悪いことこの上なく断られ続けて、もうどれくらい触れていないのだろうか。
 確かに暑い。こうも暑いとそりゃ汗だくにもなる。料理人の肌のあの触り心地も堪能できやしないだろう。汗で滑って掴み難いということで、あんなことは出来ないだろうが、その時はこんなこんなすりゃ問題ない。普段は薄い汗の味も体臭も、さすがにそうはいかないだろうが、それはそれでそそるもんだろオイ。
 少しでも過ごしやすくと、ドアや窓、どこもかしこも開け放っているから、しけこむなんてそりゃあ無理だ。みんなにバレたくねえというテメェの気持ちを思って耐えてやってるのも、それだけ惚れてるからだろうが。テメェが日頃足りねえと文句つけやがる愛情表現の塊じゃねえか。テメェもそれに応えやがれ!
 と、我慢のし過ぎで、応えたらバレるだろうという本末転倒っぷりも見事なまでに限度を遥かに飛び越えた剣士は、手っ取り早くかつ確実な手段を取った。
 つまり、金。
 「時間はお金で買えるのよ」という魔女の囁きにがっつり乗ったおかげで、過ごしやすい夜まで予測してもらうというオプションもついた。
 そして、今夜に至った訳である。

 涼やかな風に微かに揺れる金の髪。ほんのり色づいた頬は、酒のせいだけじゃないだろう。
 2人には珍しく不似合いな甘ったるい口付けを交わしながら、ゾロがサンジのシャツのボタンを下から外していくと、これまた珍しくサンジが自分でも上から外していき、自らバサリとシャツを脱ぎ捨てた。
 月明かりに浮かび上がる白い裸体。
 跨るように座るサンジに、ゾロの反応はダイレクトに伝わった。
 テメェだけが我慢してたと思うなと、クスクスと笑いながら寄せた耳元で囁くと、サンジはゾロのシャツを乱暴に引っ張って脱がし、奪うように口付け、舌を絡めた。
 求められるままに激しく応えていると、かき抱くように傷のない背中を撫で回していた手が、腹巻きの下で動きを止めた。
 唇を離し、腰の辺り、腹巻きに覆われている場所をぐるりと触る。

「どうした?」

 それには答えず、ペロッと腹巻を捲って覗き込むと、ギッと眉間に皺がよった。

「どうした?」

 ゾロがもう一度問うと、勢いよく腹巻を抜き去った。

「テメェ、ひでえことになってんじゃねえか!こんなになるまで放っておくやつがあるか!鈍感毬藻が!!」
「あ?」
「あせもだろ、これ!!」
「は?」

 ものすごい剣幕で指差して言われたものだから、思わずつられて視線をやると、確かにそこには赤い湿疹。

「ああ、これか?」
「こら、かくんじゃねえ! あ〜ひでえな、ぐるっと一周してんじゃねえか。何でこんなになるまで気がつかねえんだよ」

 そんなもんはどうでもいいと言いかけて、言えなかった。
 普段じゃ絶対見せないいたわりを滲ませた心配そうな青い瞳に見つめられ、つい見とれてしまった。
 だから。

「俺もなりやすいから辛さは分かる。仕方ねえ、取って置きのを貸してやる。ちと待ってろ」

 そういって立ち上がったサンジを止めるタイミングを逃してしまった。
 あまりにいつもと勝手が違って、顔には出さないが内心かなり動揺しているゾロの様子など気にもせず、片手に何か持って戻ったサンジは、ペタリとゾロの前に座った。

「何だそれ」
「ベビーパウダー」
「ベビーパウダー?」
「そ。コックは常に火の側だからすげー汗かくんだよ。俺、あせも酷くて、ガキの頃なんか、首やら背中やら腰やら……っと、まあ、何だ、汗かいて痒くなるところはとりあえずこれつける習慣がついちまったわけだ。ほら、テメェにもつけてやる」
「ああ、天花粉のことか」
「てんかふ?」
「俺の故郷ではそう言ってた。天の花の粉ってな」
「天の花か。なかなか風情があるな。天花粉かあ、いいな、それ。まあ、どっちにしてもテメエにゃ似合わねえフレーズだな」

 そう言って、ゾロの腰回りにパタパタパウダーを叩き始めた。
 ふわりと微かな香りがする。

「ああ、確かにテメェの匂いだな」
「俺の匂いじゃねえよ」

 アホだなあといいながら、今度は背中側にもパタパタと叩く。

「でも、これ、匂いが残らねえタイプの筈だぜ」
「ああ、普段は気にならねえけど、ヤッてる時に首筋とか脇とかからその匂いするぜ」
「……!! 脇なんて嗅ぐな、獣か!!」
「ん? ほかにも匂いする場所あんな」
「背中とか、そりゃあるに決まってる!」
「背中なあ。もっと違う場所がな」
「どうでもいいだろ、そんなこと。くだらねえこと考えてんな。ほら、出来たぞ。……ぶっ! くくくくくっ! し、白い腹巻……!!」
「テメェでやったんだろうがっ!」
「わ、悪い、でも、これで良くなるから」

 笑いを堪えながら、チュッと音をさせて唇を合わせると、すぐさま手が伸ばされ、またさっきと同じように膝に座らされた。
 首筋に顔を埋め、やっぱりテメェの匂いだと言うと、今はテメェもおんなじだと返される。
 濃厚なキスを交わしながら、ゾロの手が下着の中に手を差し入れ、尻を撫で回していると、思い出した。

「あ、そうだ、テメェのこ「考えんなって言ったろうが!!」」
「ぐおっ!!!!!!」

 すっかり油断していたため、ムートン・ショットが綺麗に決まった。

「デリカシーってもんを知りやがれ!!」

 羞恥に首まで真っ赤にして、シャツを拾い上げて出て行こうとうしたが、不意に足を掴まれた。

「ぶっ!!」

 ビタンと音を立てて前に倒れた。

「何しやがる!離せ、変態クソ腹巻!!」
「デリカシーも変態も上等だ、どこから匂うか確かめてやる!誰が逃がすか!!」
「訳分かんねーこと言ってんじゃねえ!」

 元々酔っ払ってたサンジが完全にヤる気になっているゾロの力にかなう筈もなく。

「うわっ!!」

 スポーンと景気よくズボンも下着も脱がされ。
「わーっ!!!!!!」

 足首を持ってカパーッと脚を開かれ。

「止め、〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」

 有言実行、全身くまなく確かめられた。下半身に至っては、それはもう念入りに、詳細に。





 次の日、すっかりやつれた料理人は、さめざめと泣きながら、完全無臭のベビーパウダーの作成を船医に依頼した。



end.












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