QLOOKアクセス解析

unofficial site 砂の船 - Z×S -

a present for you(1) [11.03.31.]


 宴の片付けが済み、ふと時計を見ると日付が変わるまで後1時間程だった。

「コックさん」

 カウンターにロビンの手が咲いた。形のいい唇と漆黒の瞳も。

「よかった、終わったところね」
「まさに今終わったよ。まだ下で飲んでるんだろ? 何かつまむかい?」
「いいえ、それより早く来て。サプライズプレゼントが待ってるから」

 そういうと、花びらが舞った。
 教えてしまえばサプライズにならないんじゃないか?
 ロビンにしては珍しいと思いつつ、期待半分不安半分の面持ちでアクアリウムバーへ向かった。

「コックさん、ほら」

 恐る恐る覗くサンジに気付いたロビンが指差した先には、仲間とゾロが飲んでいた。
 それ自体は別に珍しいものではない。
 が、おかしい。何がおかしいって、ゾロが変だ。いや、ゾロを知らない人間が見たら、変どころかたちまち好感を抱くだろう。
 普段の悪人面など微塵もなく、素直な柔らかい空気を纏う好青年がそこにいた。

「………………」
「ね? サプライズでしょう?」

 がぼーんと口を開けながら、瞬きも出来ずに頷いた。

「コックさん、この前『酔った毬藻が見たい』って言ったでしょ? だから、誕生日プレゼントはそれにしようって」
「ってことは……」
「剣士さん、酔っ払うと警戒心がゼロになっちゃうのね」

 よくよく見れば、ほんのり赤い顔。確かに酔っている顔だ。ゾロでなければそう思うだろう。
 素直な表情のせいか、仕草までそう見えてくる。ナミに対する態度など、紳士的にすら感じてしまう。
 呆然と見つめるサンジの元へナミがやってきた。

「あれが素なのね。意外なくらいのいい男。あれなら一稼ぎできるのになあ」
「え〜ナミさん、俺より毬藻?」
「あら、サンジ君、私の為に女の子に貢がせてくれるの?」
「……ナミさん、毬藻にホストでもやらせる気かい?」
「素面じゃ無理だから酔わせないとなんないけど」
「また酔ってくれるかしら」

 そうだ、あのゾロが酔っているなんて。

「どうやって毬藻の酒漬けを?」
「度数の高いお酒を飲ませただけよ」
「スペシャルカクテルだけど」
「スペシャル?」
「私とロビンとチョッパーの力作よ」

 それって……。

「レシピ、いる?」
「どちらかというと処方箋だけど」

 少女のような可憐な笑顔だけど、ロビンちゃん……。
 改めてゾロを見る。
 機嫌のいいときのゾロと言えばそうとれなくもないが、でも、違う。なんというか、まあ。

「で、どう? サンジ君の見てみたかった酔っ払いゾロよ」
「いやあ予想外だったぜ。ありゃあ双子の偽物で通りそうだ」
「話をすると、もっと面白いわよ。行きましょ」

 悪戯な笑顔がキュートだ〜♪とついて行くと、酔っ払ったウソップが、ゾロの背中を叩きながら絡んでいた。

「楽しそうね〜」
「何だよ、ナミとロビンがいたら、ゾロが話さねえかもしれねえだろ〜」
「テメエ、鼻! レディーと一緒に飲めることを光栄に思え!」

 その怒号にゾロが顔を上げた。
 サンジが来た事に今気付いた風に軽く目を開いた後、ふと浮かべた笑みに周りが固まった。

「ゾロ、これが誰か分かってる?」

 指を差しながら、ナミは聞いた。

「あ? コックに決まってるだろ」
「分かってるならいいけど。それはそれで面白いから」
「何がだよ」
「いーえ、別に」

「いいから続きだ。ゾロ、初恋の子はどんな子だ?」
「な〜に、恋愛話? 私も聞きたいわ♪」
「ナミまでかよ」
「だって、アンタ普段そういう話に乗ってこないじゃない」
「そうだ、いっつも馬鹿にしたような態度でよう。植物は恋愛の素晴らしさは分かんねえか?」
「そういう訳じゃねえ」

 普通に返したゾロに、またもみんなが固まった。
 しかし、今度は直ぐに食いつく。

「どういうこと? 話してみなさいよ」
「記憶にある女は一人しか浮かばねえが、じゃあそれが初恋かって言われると、どうもそういう雰囲気は欠片もねえからな」
「将来の夢を共に目指した仲だろ。こう、お互い高め合う中に甘酸っぱい何か……とか、一つや二つあるだろ」

 元来恋愛話の大好きなサンジは、勿論食い付いた。
 実に楽しそうな顔で聞いてくるのに、ゾロはちょっと面白くなさそうな表情をしながら、サンジに酒を注いだ。

「そんなにくいなを初恋にしたいのか?」
「いや、単純にてめえの恋愛話に興味があるだけだ。まさか、まだ恋愛したことねえのか?」
「いや……ん〜、でもなあ」
「お? 何だ、何だ?」

 サンジは注がれるままに杯を空け、どんどん調子が上がっていく。

「恋愛かどうか、分からねえんだよ」
「おお!? てめえも隅に置けねえなあ。ここは愛の伝道師の俺に話してみろよ。からかったりしねえよ。何せ恋はハリケーンだ。いくら毬藻でも、戸惑って振り回されて当然だぜ」
「そうか?」
「そうだ。安心しろ、口は固いぜ」



→(2)












人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -