強者の論理 [09.11.17.]
誰もが、強いと思っている。
最強を目指すために惜しまぬ努力。それが更に強者の印象を与える。事実に裏打ちされ、誰もが確信をもって賞賛する。
そんな男に、俺は弱さを見る。
信念をもって、迷いもなく、ただひたすらに野望に向かう。排他的なまでに。
それは弱さ故ではないか、と。
人は、諦めずに夢を追う姿を強いという。
夢を諦め、他の道を選ぶ者を「負けた」という。
夢を諦めるには、相当の苦痛が伴う。弱い者が、その苦痛を受け入れて他の道を歩むことなど、できるわけがない。
どんな道を選んでも、笑って生きていける者こそ、本当に強い者だ。
一つの道しか見えず、それだけに向かっているのは、他の道を歩めないからに他ならない。その道が行き止まった時、盲目的な者はどこへ向かえばいいのだろうか。否、どこかへ向かうことができるのだろうか。
ただ壊れゆくのではないだろうか。
自分が他の道では生きていけないことを、お前は知っている。
それが決して強さではないことも、きっとお前は分かっているんだろう。
そのまま前だけを向いていろ。
その弱さを抱えながら、ひたすらに渇望していけばいい。
その弱さに耐えうる身体を、俺が内から作ってやるから。
その道が行き止まったときは、蹴り飛ばして道は作れることを示してやるから。
その弱さに心が疲れたときは、俺が抱きしめていてやるから。
俺はずっとここにいるから、お前はそのまま前だけを見据えて進め。
弱者のままに、最強となれ。
end.