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初・いつものこと。(1) [10.02.13.]


 各々が好きに過ごす時間に、ナミが集合をかけた。
 準備万端なチョッパーが一緒だ。

「みんな、予防接種を受けてもらうから」
「予防接種?」
「そう。次の島で流行してるのよ。でも、予防接種をしておけば、重症化は防げるの。あまり長居できない島だし、その次はちょっと長い航海になるかもしれないの。だから、入院とか絶対避けたいわけ。チョッパーに呼ばれた順に、きっちり受けること!」

 と、いうことで、順次接種を受けさせられた。

 そして、異変が起きた。

 夕食の時間、いつもの食事風景。いつもの様にゾロにだけ酒のつまみが追加された。

「ほれ」
「ああ、悪いな」
「!?」
「なんだ?」
「ナミさ〜ん、嵐の前兆だ!」「失礼のヤツだな」
「ケンカは外よ!」

 そう。いつもなら派手なケンカに突入しそうなものだが、ゾロの反応にいつもの覇気がない。

「お前、マジで何か変じゃねえ?」
「あ?」

 トテトテとチョッパーが来た。脈を計り、額を触り、目を覗き込む。

「関節痛くないか? だるさは?」
「関節……痛くはないが、違和感がある。少し体は重い感じがするが、まあどっちもトレーニングの後だからだろ」
「ゾロ〜、言っておいただろ、ちゃんと自覚してくれよぉ」
「悪い」
「食事も無理するな」
「いや、食う」
「何だ何だ、食えねえのか?」
「食う。俺のだろ」
「いいのか? チョッパー」
「まあ、ゾロだし」

 黙って見ていたナミが口を挟んだ。

「ちょっと、どういうこと?」
「発症したんだ」
「予防接種が遅かったってこと?」
「予防接種で発症したんだ」
「「「???」」」」
「説明は後でするよ。あ、隔離とか必要ないから、みんなは大丈夫。ゾロ、食べ終わったら診察するぞ。男部屋へ来てくれよ。サンジ、ごちそうさま」

 それだけ言って、チョッパーは寝床を設えに男部屋へ向かった。
 ゾロは何事もなかった様に食事を再開した。食べ終わって男部屋へ向かう足取りもしっかりしている。

「よく気づいたわね、サンジ君」
「ナミさんのことだったら、もっと早く気づいたと思うよ〜♪」
「あっそ。でも、予防接種で寝込むって、どういうことかしら?」 
「毬藻に人間用はまずかったんじゃないですかね」
「抗体を作るためのウイルスで発症してしまったのね」
「ロビン、ちゃんと説明して」
「これは、発症しない程度のウイルスを接種して抗体を作らせるタイプの予防注射なの。ごく僅かな量ではあるのだけれど、剣士さんには発症するのに充分だったのね」
「えー!! だってゾロよ? 風邪だってろくにひかないわよ、あいつ」
「そうだよ、ロビンちゃん。そんな繊細な質じゃないだろう? むしろウイルスを取り込みそうじゃねえか」
「でも、抗体とか免疫力に関して、時々船医さんが血液検査していたわよ」
「よく分からないけど、まあいいわ。私達には移らないみたいだし。サンジ君は、食事とかで迷惑かけられちゃうんだろうけど、よろしくね」
「ナミさんのお願いだ、毬藻の世話なんて楽勝さ〜♪」


* * * * *



 そして、その夜。
 サンジとチョッパーが、僅かな音と気配に気づいた。

 「男部屋だな」

 深夜にはまだまだ早い時間。1名を除いて皆ラウンジにいる。
 2人連れ立って男部屋へ向かった。

「ゾロ!」
「ああ……悪いが水くれるか」

 ゾロははあはあと荒い息をしながら、床に座り込んでいた。水は、すぐ横のテーブル代わりの箱に置いてあるのだが、そこまで手を伸ばすことさえ辛いようだ。

「ほら、飲めるか?」

 チョッパーがコップを傾けると、何とか飲み込むが、やはり辛そうだ。

「チョッパー、男部屋より格納庫の方がいいんじゃねえか? これじゃ、上に行きたくても登れねえだろ」
「そうだな。俺、みんなに説明して、格納庫の準備してくるよ。ここ、頼めるか?」
「いいぜ。水いるか?」

 チョッパーからコップを受け取りながら、問いかける。
 ゾロは何とか頷き、サンジは慎重にコップを口元に運んだ。

「さて、辛いついでだ。格納庫まで行っちまおう。借りるぞ」

 そう言って、バンダナを手に取り、ゾロの両手首を結んだ。そして、その腕をくぐり、背負った。

「胸の感触がねえのは、つまんねえなあ。よっと。さすがに筋肉は重てえわ」

 ほぼ同じ身長なので、担いでもゾロの爪先がつきそうな感じだが、それに構わず、サンジは歩き出した。

「……おい」
「文句は聞かねえぞ」

 そう言うと、ゾロを背負ったまま梯子を登って行き、何とか臨時病室と化した格納庫へ到着した。

「ありがとう、サンジ。俺が連れてくるつもりだったのに」
「まあ、ついでだ」

 そういってきびすを返すと、何かに引っ張られた。見ると、ゾロがウォレットチェーンを掴んでいた。



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