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続・いつものこと。(1) [10.02.04.]


 とても爽やかな晴天のある日。
 フランキーは、ウソップと二人で甲板で頭脳パズルを作っていた。
 ふと、音が聞こえた。
 方向からして、ゾロだなとあたりをつけ、そっちへ目を向けた。
 確かにゾロだ。
 だが。

「なあ。何で毛布にくるまってるんだ?」
「ん?」

 ウソップは顔を上げ、二人して動く毛布を目で追った。
 それは、多少ふらつきながらラウンジに入っていった。

「たどり着いたなら、放っておいて大丈夫だ。」
「何だ?」

 フランキーの疑問の声は、大声に消されてしまった。

「チョッパー!」

 サンジがラウンジから顔を出し、叫んだ。

「……何だか覚えのある光景だな」
「ゾロがまた何かもらったんだろ。まあよくあることだな」
「剣士のにーちゃん、丈夫なんだか虚弱なんだか、分かんねーな」
「ゾロが虚弱……怖ーな。まあ1回かかっちまえば後は問題ないらしいぜ。ゾロが発症したくらいのウイルス量じゃ、俺達は発症しないしな」
「赤ん坊みたいだな」
「ゾロが赤ん坊……。まあ、『寝てりゃ治る』ってアイツは言うが、こればっかりは本当にそうだから、そういう意味では、俺らは何にも迷惑はかからねえよ。1名を除いてな」
「しかし、何でラウンジなんだ? 部屋か医務室で寝てりゃいいんじゃねえか?」
 「サンジがラウンジにいるからな」
「?」
「まあそのうち嫌でも分かるさ」
「そういえば、コーラを貰いに行くって言ってあったんだった。ついでに様子見てくるか」

 そう言って、フランキーはラウンジへ向かった。


* * * * *



 中にはちょうど診察を終えたチョッパーがいた。

「どうなんだ?」
「大したことないよ」
「でも、採血してるじゃねえか」
「ああ、研究用にサンプルを貰っただけだ。みんなは発症しないよ。サンジ、食事も問題ないからね」

 そう告げると、ホクホク顔で出て行った。

「随分とご機嫌だな」
「研究好きだからな、ドクターは。毬藻が寝込むと喜々とするぜ」

 そのゾロはというと、ソファの上で毛布にくるまり、横たわっている。僅かに緑が覗いている。

「で? 何か用事があったんじゃねえのか?」
「お、おう、コーラを貰いにな」
「そうだった。いっぱい仕入れてきたぜ」
「ありがてえ」

 コーラを受け取り、ゾロの方を見た。相変わらず緑が少し覗いているだけだ。
 部屋で寝た方が静かじゃねえかと声をかけようとした時、ゾロが毛布から顔を出した。正確には目だけ出し、睨み付けている。只でさえ悪い目つきが、2割増くらいになっている。
 視線を追うと、部屋を出ようとするサンジがいた。
 射るような視線に振り向いた。

「ジャガイモを取りに行ってくる。直ぐ戻る」

 自分に言われた訳ではないのは、視線が自分に向いていないことで分かるが、かと言って、あれだけの視線を向けられて、いつものマシンガントークが炸裂しない。
 もの凄く、もの凄く驚いた。
 サンジが出て行き、ゾロの方を見ると、やはり不機嫌そうな目だ。まあ、具合が悪いんだから仕方ないと思いつつ、声を掛けた。

「よう、大丈夫か? 医務室とかで寝てた方がいいんじゃねえのか?」
「……ここでいい」
「でもよー」
「フランキー、ウソップが悩んでたぜ」

 言葉通り直ぐに、両手にジャガイモを山のように抱えたサンジが戻ってきた。そして、ゾロはその姿を確認すると、また目深に毛布を被り、蓑虫と化した。
 何なんだと思いつつ、フランキーはラウンジを出ていった。


* * * * *



 昼食の時間になり、みんながいつものように席に着く。ゾロは相変わらず蓑虫のままだが、誰も気に留める様子すらない。

「おーい、ゾロ。お前の分、食っていいか?」

 寝込んでいると分かっていないのかと思うほど、いつも通りの船長の声。

「食う」

 蓑から顔を出し、なんとか体を起こす。それを見て、サンジはゾロの分だけトレイに乗せ、ゾロの元へ運んだ。

「ほらよ。持てるか?」
「ん」 ……何だろう、この違和感。
 食事が終わり、各々が散っていっても、フランキーは何故か腑に落ちない面持ちで、テーブルで食後のコーラを飲んでいた。
 片づけが終わったサンジが、ラウンジを出ていこうとしたとき、またもゾロが毛布から覗いた。

「トイレだ、トイレ」

 苦笑しながらも、怒ることなくそう告げて、ラウンジから出ていった。
 そして、程なくしてサンジが戻ってくると、ゾロはまた蓑虫になった。
 ……何なんだ?



→(2)












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