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小春日和 [09.12.21.]


 昼食の片付けが終わり、煙草に火をつけ、ソファーに向かう。
 ソファーでは、ゾロが昼寝をしていた。どこでもいつでも眠るゾロだが、天気がいいのにソファーで寝るのは珍しい。
 どうやらぐっすり寝入っているようだ。
 分かっていながら、部屋の中をキョロキョロする。他に誰もいない。
 一度ゆっくり煙草を吸い、鼻歌交じりに近づいて、その首筋に両手を当てた。

「お湯で洗えよ」
「……驚かし甲斐ねえな。毬藻は寒い所の湖が故郷だったもんな」
「せっかくフランキーが湯沸かし器を作っても、意味ねえだろうが」
「まだまだ耐えられるぜ」
「アホか」
「てめえに言われたかねえよ、マゾヒスト」
「マゾじゃねえ」
「『火もまた涼し』なんてのは、マゾの言い訳にしか聞こえねえよ。熱いもんは熱いっつーの。あー、あったけ〜♪ 指先、ジンジンするぜ」
「てめえは一人寒冷耐久大会やってるじゃねえか」
「てめえも参加しろ」
「するか。いい加減離せ。眠れねえ」
「んな訳あるか。寝腐れ腹巻き」
「腹巻きん中、突っ込め」
「ルフィ達じゃねえんだ。つまんねえだろ」
「あっためんのに、面白みがいるのかよ」
「それが人生を楽しむコツだろ」「……じゃあ」
「エロはいらん」
「楽しみてえんだろ?」
「楽しくねえよ」
「あ?」
「俺様の今の楽しみは、一仕事終えた後の一服だ」
「だったら大人しく吸ってろ」
「悴んだ指で吸ったら、半減するだろうが」
「知るか」
「ああ? 俺様の白魚のような指に文句つけるのか? 天才の指を!」
「えらくごっつい白魚だな」

 ゾロは、頭の下で組んでいた手で首筋に当てられているサンジの手を掴んだ。そのままサンジの両手の指先を重ね合わせると、片手でがしっと掴み、自分の胸に押し付け、もう片方の手はまた頭の下に戻し、目を閉じた。

「……何してんだ?」
「寝る」
「いやいやいや」

 これはまあ、普通に考えて、悴んだ指を温めてくれようとしているのだろう。あれだけ訴えた訳だ。そうなんだろう。よしよし。
 ……が、妙に照れくさい。握られた指よりも、顔が熱い。
 ゾロの心音が伝わる。聞き慣れてるどころか、いつも何の隔たりもなく耳を当てて聞いているってのに、服越しに、握られた手で感じる心音。
 意識しないようにと思う程、ドキドキしてくる。
 ようやく煙草の灰が落ちそうになっているのに気づき、携帯灰皿を手に取ろうとするが、がっしり握られ、離れない。

「もう十分だ。離せ」
「……」
「おい」
「ぐぅ」
「本当に寝てやがる」

 寝顔を見つつ、ちょっと心も暖かくなっちまったなーと思って、油断した。

「サンジ君、喉渇いちゃった」
「ナナナナナミさんっっっ!?」
「あーら、ごめんなさい。お邪魔しちゃったわね」
「ち、違うよ、ナミさんっ!! 寝ぼけて掴まれて馬鹿力で掴まれて起きねーから煙草が落ちそうでイヤ灰皿が取れなくて」
「ああ、これね。はい」
「ああ! ナミさんの手ずから煙草の灰を落として頂けるなんて! ……って、ナミさん!?」
「ああ、飲み物は適当にするから」
「ええ!?」
「だって、取れないんでしょ、それ。サンジ君でも無理なのに、私じゃ外せないわよ。まあする気もないけど。ゆっくりイチャついてて」
「イチャつくなら、ナミさんとかいいです〜!!」
「あら、顔が恋する乙女な感じになってるのに? 馬に蹴られたくないわ。じゃあね」
「ナミさ〜〜〜ん!!」

 暖かくなってる場合じゃなかった。午後のキッチン。午後のラウンジ。いつも誰かが訪れる憩いの場。見られた。よりによって、ナミさんに。
 毬藻に手を握られてるところを。
 恋する乙女……。

「うがぁっ!! このハゲ腹巻き〜!!」
「ぐおっ!!」





「あら。コックさん、今のは本気みたいじゃない?」
「大丈夫よ、ゾロだもん。死なないわよ」
「どうせ余計なこと言ってきたんだろ。船、壊させんなよ」
「そんなことないわよ、失礼ね」
「今日も平和ね」
「はぁ〜……」

 もの凄い破壊音に刀の音が混じる頃には、誰も気に止めることはなかった。 小春日和の中、サニー号は和やかに進む。
 今日のおやつは何かなあとか思いながら。



end.
 












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