Time over [09.11.24.]
宴会が終わり、各々部屋に引き上げ(半分ほどは、他力で放り投げられ)、ラウンジには二人だけ。
ゾロは彼の為に開けられた酒を呑んでいる。
そこへ、片付け終わったサンジが、自分の酒と2人分のつまみを持って来た。
自分の隣に座るようテーブルを指で軽く叩く。たまに二人で呑む時、ゾロがよく見せる仕草だ。だから、ゾロの瞳の色に気付くことなく、そこに座った。
ゾロがサンジに酒を注ぎ、軽くグラスを傾け合う。
サンジがグラス半分ほど呑んだ頃、ゾロが口を開いた。
「誕生日プレゼント、くれ」
「は?」
サンジの方を見ずに語られた言葉を思わず聞き返した。
「誕生日プレゼント、くれ」
今度はしっかり目を合わせて言われた。
「……あの料理と酒じゃ、不満だったか」
「いや、あれはあれで申し分ねぇ。美味かった」
「! ……じゃあいいじゃねえか」
「言い訳があった方がいいだろうからな」
「言い訳? らしくねえな」
「言い訳が欲しいのは、俺じゃねぇ」
「あ?」
「テメエだろ」
「何のだよ!! 人語を、分かるように話しやがれ!!」
「大人しく俺のモノになれるだろ」
「な……!!!!!!」
目を見開いて絶句する顔にニヤリとすると、金色の頭の後ろをわし掴むようにして引き寄せ、唇を重ねた。もうこれ以上は無理だろうというくらい、まん丸になった目。
重ねただけの唇を一度離した。驚きの余り、少し開いている唇に、今度は舌を差し入れ、一舐めし、離した。
苦いタバコの香りの、甘い甘い味。
「たまんねえな」
漸く我に返ったサンジは、瞬時に真っ赤になった。
「なななななな、何しやがる!!」
「プレゼントって言ったろ」
「やるなんて言ってねえ!!」
「知るか、そんなもん」
「……俺の気持ちは無視かよ」
「言えよ。聞いてやる」
「プレゼントをやる義理はねえ」
「そうか」
「だから離…んーー!!!!!!」
今度は腰も引き寄せ、思いきり唇を、舌を、唾液を堪能する。
その苦くて甘い味に、琥珀の瞳が妖しく光る。
その明らかな変貌を、サンジはその薄い唇と舌を貪られながら見つめていた。
たっぷり味わい、触れるか触れないかの距離まで離された唇から、滴が落ちた。
「話は聞いてやったし、言い訳も用意してやった。充分だろ? そこにテメエの欲しいモノでも感じとけ」
「……何だよ、それ……」
先ほどのキスで上気した表情のまま、蒼さには怯えが走った。
「何だよ、俺の欲しいモノって」
「さあな。後はテメエ次第ってこった」
白い頬は更に朱を帯び、怯えは透明な滴に溶けてそれを伝う。熱い舌がゆっくりと舐めとっていく。
「もういいだろ。さっさと喰わせろ」
「待て待て待て待て待て!!」
言葉とは裏腹に、その表情に安堵と幸福を滲ませている。
「待たねえ。っつうか、待てねえ。待てるかよ」
「いや、そこは待つべきだろ」
綺麗な蒼が、微かに笑う。 「ああ。もううるせえ」
また荒々しく口を塞ぎ、そのまま乱暴に床に引き倒した。しかし、頭はゾロの手が支えていて、打ち付けることはなかった。
「はぁ……、返事、いらねえのかよ」
「いらねえ」
「ぁ……ちょっと待てって! ここでする気か!! 取り敢えず待ちやがれっ!! あ、そうだ、聞いてからの方が旨いと思うぜ、…っ、こら、聞け!!」
「聞く前を知らなきゃ比べられねえだろうが。今はこれがいい」
「俺はよくねえ!!」
「ちっ」
……言いたくなかったんだがな。
「もうずっと飢えてんだよ。喰わせろ」
一瞬にして固まったサンジの、ピンクに染まった首筋に喰らいついた。
end.